フォト・エッセイ(1) 六甲山の新緑


 神戸に来てうれしいことの一つは、すぐ近くに山があることだ。
 東京にいたとき、わたしは週末よく奥多摩秩父にまで出かけて行って、山の中を歩き回りながら写真を撮っていた。だが、わたしが住んでいた上石神井から奥多摩秩父までは、電車で1時間以上かかった。山から帰る電車が満員の通勤電車で、せっかくリフレッシュした気持ちがしぼんでしまうということもあった。だが、今わたしが住んでいる六甲登山口交差点付近は、もうすでに六甲山へのハイキングコースの一部に入っている。つまり、気が向けばいつでもその場からハイキングに出かけてしまえる条件が整っているのだ。しかも、六甲山の自然は奥多摩秩父に勝るとも劣らないほどすばらしい。この写真を見てもらえば、そのことが分かってもらえると思う。
 自然の中を歩いていると、昨日までの生活の中でどんなにいやなことがあったとしても、それを忘れてしまう。美しい自然に感動しながら山道を歩いていると、もうそんなつまらない過去のことはどうでもよくなってしまうのだ。とりわけ山に新緑があふれるこの季節、木々の生命力に包まれながら道を歩いていると、木々の力がわたしの体にも入ってくるようで、だんだん元気が湧いてくる。この世界は、何か不思議な力で満たされているようにも感じる。その不思議な力、わたしたちに元気を与えてくれる力の正体は、実は神の力なのだとわたしは思っている。
※写真の説明…六甲山から森林植物園に向かって下っていく徳川道の途中にて撮影。ミツバツツジのピンクが新緑の中でひときわ映えていた。