やぎぃの日記(5) 初もの尽くし


 六甲教会での「初ミサ」に始まって、生まれて初めてすることや、司祭になってから初めてすることが連日のように続いている。今日はそういうことが4つあった。
1.初結婚式司式
 今日は生まれて初めて結婚式の司式をした。慣れないのでいくつか失敗をしてしまって申し訳なかったが、全体として見た時にはとても感動的な式だったと思う。本人たちがどう思っていたかは分からないが、わたし自身はとても感動した。会場全体に、これから結婚生活という未知の世界に漕ぎ出していこうとする2人を支えたい、2人を祝福したいという雰囲気がみなぎっていたし、2人の将来ために神様に導きを願いたいという祈りが聖堂全体にあふれ出していた。わたしは式の最初から最後まで感動していたが、特に最後、2人がみんなの祝福を受けながら退場していく場面では涙がこみ上げてきた。「これからいろいろ大変なこともあるだろうけれど、2人で力を合わせてがんばれよ」と言ってあげたいような気持で、胸がいっぱいになった。今日を含めてまだ数回しか会ったことのない2人だが、彼らの将来のために心から祈りたいと思う。
2.初聴罪
 もう一つ生まれて初めてのことだが、今日初めて六甲教会の告解室に入って罪の告白を聴き「ゆるしの秘跡」を行った。罪の告白を聴きながら、告白している人に対して言いようのない共感を感じることが多かった。なぜなら、わたし自身がいつも聴罪司祭に告白しているような罪を彼らも犯し、わたしと同じように苦しんでいたからだ。わたし自身がその罪をゆるされたときに感じた安らぎや落ち着きを思い出しながら、彼らも同じような体験ができるようにと思って精一杯の指導をしたつもりだが、果たしてどうだったのだろうか。人々の罪を聴き、彼らとともにその罪を担っていくということは、司祭の重要な役割の一つなのだろう。新しい使命の責任と意味深さをしみじみと感じた今日の初聴罪だった。
3.初教会学校
 叙階式後、初めて教会学校に出席した。日曜日の祝賀会で子どもたちが、踊りや歌、絵、手紙などありとあらゆる形でわたしの叙階を祝ってくれたことにひどく感動していたので、今日の教会学校にはとても力が入った。子どもたちの祝福と期待に応えなければと思ったのだ。今日は1人の青年リーダーの名前を冠した運動会「ウノリンピック」の日だったので、体力的にはついて行けない部分がややあったのだが、気持ちとしては子どもたちととことん付き合いたい思いでいっぱいだった。子どもたちが「やぎぃ神父」と呼ぶのにはやや抵抗があったが、まあ仕方がないだろう。今まで通り「やぎぃ」と呼んでくれた方がこちらとしては気が楽なのだが。ともかく、子どもたちは子どもたちなりにわたしが神父になったことを意識し、祝ってくれているようなので、そのことに心から感謝したい。
4.初やぎぃの会
 これも叙階式後初めてのことだが、教会学校のあと「やぎぃの会」があった。今回のテーマは「わたしにとって教会とは?」ということだった。わたしが第二バチカン公会議で打ち出された「秘跡としての教会」、「神の民としての教会」理解に基づいた現代の教会論について簡単に説明した後、グループに分かれて分かち合いをした。わたしは途中で「ゆるしの秘跡」のためにしばらく席を離れなければならなかったが、若者たちは自分が何を求めて教会に来ているのか、教会に来て何を感じ、教会の何に惹かれているのかなどについて活発な分かち合いをしていたようだった。
 若者たちの分かち合いを聞きながら、わたし自身はなぜ教会に来るようになったのだろうかと考えていた。どうも分かち合うのも恥ずかしいようなことだが、わたしは若いころとても屈折していたように思う。コンプレックスの塊のような青年だったわたしは、学生時代まで学歴や能力によって自分を認めてもらうことに必死だった。父の死をきっかけにしてそのような努力に疑問を抱き始めてからは、教会の仲間たちからなんとかして自分を認めてもらうことに必死だった。そのために、わたしの周辺にいた人たちにはずいぶん迷惑をかけたように思う。あの頃は、今から考えると冷汗がでるようなことをさかんに言ったり、したりしていた。
 イエズス会に入ってからもしばらくはその傾向が消えなかった。頭ではイエスはありのままのわたしを愛してくれていると思いながらも、勉強や出版、社会的な活動などによってなんとか人々に認められたいとあがいていた時期が長く続いたように思う。そのような思いが少しずつ消え、神から愛されているということを心の底から実感し、神から受けた愛の豊かさを人々と分かち合いたいと真剣に思えるようになったのはほんの数年前のことだ。
 母なる教会は、未熟で愚かな1人の青年を懐深く受け止め、育み、司祭にまでしてくれた。そう思うと、教会に対して感謝の思いでいっぱいだ。この恩を、生涯をかけた教会への奉仕の中で返していきたいと思う。
※写真の解説…散歩中に見かけた花。