バイブル・エッセイ(25) 招かれた人たち


 今回のバイブル・エッセイは、10月12日の「子どもミサ」での説教に基づいています。
 エスは、また、たとえを用いて語られた。「天の国は、ある王が王子のために婚宴を催したのに似ている。王は家来たちを送り、婚宴に招いておいた人々を呼ばせたが、来ようとしなかった。そこでまた、次のように言って、別の家来たちを使いに出した。『招いておいた人々にこう言いなさい。「食事の用意が整いました。牛や肥えた家畜を屠って、すっかり用意ができています。さあ、婚宴においでください。」』
 しかし、人々はそれを無視し、一人は畑に、一人は商売に出かけ、また、他の人々は王の家来たちを捕まえて乱暴し、殺してしまった。そこで、王は怒り、軍隊を送って、この人殺しどもを滅ぼし、その町を焼き払った。そして、家来たちに言った。『婚宴の用意はできているが、招いておいた人々は、ふさわしくなかった。だから、町の大通りに出て、見かけた者はだれでも婚宴に連れて来なさい。』そこで、家来たちは通りに出て行き、見かけた人は善人も悪人も皆集めて来たので、婚宴は客でいっぱいになった。(マタイ22:1-10)

 王様が自分の子どもの結婚のお祝いをしようと思ってみんなを招いたけれども、みんなは忙しいと言って来なかったという話です。王様と言ってもみんなにはよく分からないかもしれないので、今の時代だったらどういうことか考えてみましょう。
 神戸市に住んでいる1人の男の子(仮に太郎くんとしておきましょう)は、今度10歳になります。太郎くんのお父さんとお母さんはとても喜んで、記念に太郎くんの友だちをたくさん呼んで誕生パーティーを開こうと思いました。太郎くんも喜んで、さっそく学校の仲間や近所の子どもたちに手紙を書きました。手紙には、あまり上手ではないけれども心を込めた字で「今度の土曜日はぼくの10歳の誕生日です。一緒にお祝いしたいので、10時ころうちに来てください」と書いてありました。手紙を書いてみんなに渡した後、太郎くんはお母さんと一緒に部屋をきれいに掃除したり、お父さんと一緒に庭の草をむしったりして、一生懸命にみんなを迎える準備をしました。
 こうして土曜日、誕生日の当日がやってきました。お母さんは、お友だちのためにおいしい料理をたくさん準備しています。お父さんと太郎くんは、部屋にきれいな飾り付けをしました。近くのお店から、大きなケーキも届きました。お母さんの焼いてくれたパイのいい匂いが部屋中にしています。10時ころになったので、太郎くんは誰か来ないかなと思ってうちの門の外に出て待っていました。ところが、10分待っても、20分待っても、30分待っても誰も来ません。太郎くんはお父さんとお母さんと相談して、友だちを迎えに行くことにしました。
 最初に会った友だちは太郎くんに、「ごめん、今から野球に行くんだ」と言いました。仕方ないと思って太郎くんは別の友だちのうちに行きました。ところが、その友だちにも「今からお母さんと映画を観に行くんだ」と言われてしまいました。次に会った友だちは「宿題が終わっていないから」と言い、その次の友だちは「塾に行くから」と言いました。最後に会った友だちが「今、ゲームをしているから」と言ったとき、太郎くんは思わず「どうして来てくれないの」と言いました。すると、その友だちは「うるさいなぁ」と言いながら太郎くんを叩いて追い出しました。太郎くんは泣きながら家に帰りました。
 さあ、このとき太郎くんや太郎くんのお父さんとお母さんはどんな気持ちだったでしょうね。きっと、悲しくてたまらなかったでしょう。せっかくみんなでお祝いしようと思ってごちそうを準備したり、家をきれいにしたりしたのに、誰も来てくれなかったんですから。
 この話の太郎くんは、実はイエス様のことで、太郎くんのお父さんというのは神様のことです。イエス様と神様は、地上の人たちがいろいろなことで苦しんでいるのを見てかわいそうに思い、みんなを「神の国」に招くことにしました。「神の国」には、みんなが幸せになるために必要な楽しいことやうれしいことがいっぱい準備してあります。でも、イエス様がみんなを迎えに行くと、みんなはいろいろな理由をつけてイエス様と一緒に行くのを断りました。中には、怒ってイエスを殺そうとする人までいました。イエス様は、いったいどんな気持ちだったでしょうか。
 イエス様は、今でも色々なやり方でわたしたちを「神の国」に招いてくださっています。イエス様は、聖書の言葉やわたしたちの身近にいる人たちを通して、わたしたちを「神の国」に招いてくださっています。わたしたちは、その招きにどうやって答えているでしょうか。お父さんやお母さんから、一緒に教会に行こうと言われたとき、みんなはどんな風に答えますか。教会学校のリーダーから「みんなと一緒に楽しく遊びましょう」と言われたとき、どう答えていますか。
 みんなのことが大好きでたまらないイエス様を、悲しませるのはいやですね。イエス様を悲しませることがないように、イエス様に招かれたらいつでもすぐに「神の国」の方に向かって歩き出したいものです。
※写真の解説…姫路城に隣接した好古園の庭園。