バイブル・エッセイ(29) 2つの怒り

このエッセイは、11月9日に行われた「七五三ミサ」での説教に基づいています。

 ユダヤ人の過越祭が近づいたので、イエスエルサレムへ上って行かれた。そして、神殿の境内で牛や羊や鳩を売っている者たちと、座って両替をしている者たちを御覧になった。イエスは縄で鞭を作り、羊や牛をすべて境内から追い出し、両替人の金をまき散らし、その台を倒し、鳩を売る者たちに言われた。「このような物はここから運び出せ。わたしの父の家を商売の家としてはならない。」弟子たちは、「あなたの家を思う熱意がわたしを食い尽くす」と書いてあるのを思い出した。(ヨハネ2:13-17)
 今日は七五三をお祝いする日なのですが、聖書の中のイエス様は残念ながら怒っています。お祈りをするための家で、みんながお祈りをしないで牛や羊などを売り買いしていたからです。教会でお祈りをしているときに、牛や羊が入ってきたらたいへんですね。モーモー、メーメー騒いでお祈りどころではなくなるでしょう。イエス様が怒ったのも無理はないと思います。
 皆さんも、お父さんやお母さんに怒られたことがあるでしょう。わたしも皆さんくらいの年齢の頃、よくお父さんやお母さんから怒られました。たとえば、あるときわたしは家の中でボール遊びをしていました。きっと雨が降っていて外に出られなかったのだと思います。ポールを勢いよく投げたとき、運悪くそのボールが床の間に飾ってある人形のケースを壊してしまいました。そのとき、わたしはお父さんにひどく怒られました。あのときのことは、今でもはっきりと覚えています。今から思えば、その人形は祖母か祖父がわたしの成長を願って買ってくれた大切な五月人形だったです。あのとき、お父さんはどんな気持ちでわたしをしかったのだろうかと思います。
 誰かを怒るときに、2種類の怒り方があるでしょう。1つは、何かをされた仕返しに怒るという怒り方です。何かをとられときに、「何するんだよ」と腹いせに怒るような怒り方ですね。もう1つは、大好きな相手が悪いことをしたときに悲しみや相手への心配から怒るという怒り方です。大切な友達に嘘をつかれたときに、「どうしてそんなことをするの」と怒るような怒り方ですね。わたしのお父さんの怒りは、きっと2つ目の怒りだったのでしょう。子どもが嫌いで怒ったのではなく、子どもがかわいくて大切だからこそ怒ったんだろうと思います。
 聖書の中のイエス様の怒りもきっと同じでしょう。大切な神様の子どもたちが、言いつけを守らずに神様の家で勝手なことをして神様を悲しませているのを見て、イエス様は悲しみ、また彼らのことを心配して怒ったのだと思います。皆さんのお父さん、お母さんが皆さんを叱るときも、きっとそれと同じです。イエス様やお父さん、お母さんを悲しませ、怒らせることがないように、いつでも神様の言いつけを守っていい子でいられるようにとこのミサの中で祈りましょう。わたしたちも、六甲教会の子どもである皆さんのために一緒にお祈りします。
※写真の解説…刈り取りが済んだ田んぼ。