フォト・エッセイ(87) 岡本から有馬へ①


 岡本梅林の梅がそろそろ満開だと聞いたので、梅を見てから山登りをしようと思って地図を見ていると、岡本から有馬に抜けるちょうどいい道があった。打越峠、住吉道を経て六甲山最高峰に至り、そこから有馬へと下っていく道だ。今回は、その道を歩いてみることにした。
 岡本梅林は、阪急岡本駅から歩いて10分くらいのところにある。教会の近くということもあって、たくさんの人からこの梅林について聞いていたので楽しみにして行った。だが、残念ながら梅はそれほどたくさん咲いていなかった。毎年見に来るという地元の人の話しによると、今年は全体的に花のつきが悪かったらしい。少しがっかりしたが、気を取り直して写真を撮り始めた。
 風景を大きく切り取るとどうしてもさびしい写真になってしまうので、できるだけ小さな部分にある美しさを見つけるように心がけた。どんな景色の中にでも、よく見ればはっとするほどの美しさが隠れているものだし、神様はすべてのものを通してわたしたちに語りかけておられる。満開の桜、紅葉などの美しい景色から聞こえてくる声はとても大きな声だが、冬枯れの景色の中に梅が少し咲いているという景色から聞こえてくる声はとても小さな声だ。静かに耳を傾けなければ、聞き逃してしまう。そう思いながら、景色を丁寧に見ていくと、意外にたくさんの美しさを見つけることができた。
 小さな部分に、数輪の梅の花と枝、そして青空が凝縮された美を作り出しているのを見つけるたびに、思わずためいきがでた。まるで、小さな宇宙がそこにあるようだった。見つめているうちに中に引き込まれてしまいそうだった。「美は細部に宿る」というが、神もまた細部に宿るのかもしれない。







※写真の解説…岡本梅林の梅。