フォト・エッセイ(89) 綾部山梅林①


 昨日は、2週間ぶりにお休みをもらって綾部山梅林に行ってきた。綾部山梅林は、たつの市御津町にある大きな梅林だ。町の梅農家の人たちが協力して運営し、花の時期になると一般公開しているらしい。六甲駅から電車に乗ると1時間半くらいで山陽電鉄網干駅に着くが、綾部山梅林はそこからさらにバスで10分ほど行ったところにある。
 ここのところ天気が不安定だが、昨日は幸いにもすっきりとした青空が広がっていた。バスを降りて山を見上げると、もう全山満開の梅林が見渡す限りに広がっていた。梅の香りも辺り一面にただよっていた。青空と暖かな日差し、色とりどりの美しい花々、これだけのものが揃ってしまうと、わたしはもう我を忘れてしまう。すぐにカメラを取り出して、あっちに行ったりこっちに行ったり、立ったり座ったりしてさまざまな角度から写真を撮り始めた。
 「一目二万本」という宣伝文句だったが、どうも実際にそのくらいあるように感じられた。ところどころ菜の花が植えられており、その黄色が梅の白やピンクにアクセントを添えている。メジロなどの鳥も、群れをなして梅林のあちこちを飛び回り、花をつついていた。そんな梅林を歩き回りながら写真を撮っているうちに、なんとも言えない幸福感が心の底から湧き上がってきた。「ああ、ついに春が来た」という喜びを全身で感じた。
 「春爛漫」という言葉があるが、それは昨日の綾部山梅林のためにあるような言葉だ。冬のあいだ寒さに耐え、じっと養分を蓄えてきた木々が一斉に花をつけ、今を盛りと咲き誇っている。梅林全体が、生命の躍動に包まれているように感じた。その躍動が伝わり、わたしの心もうれしさに飛び跳ね始めたようだった。2週間分の心と体の疲れも、一気に吹き飛んでしまった。







※写真の解説…綾部山梅林にて。