フォト・エッセイ(90) 綾部山梅林②


 メジロを追いかけて梅林の中を歩いているうちに、高いところまで登ってきた。
 名前の通り、綾部山梅林は綾部山という山の斜面に広がっている。この梅林の特徴は、梅の花々の向こう側に海が見えることだ。高いところから見渡すと、遠くに瀬戸内海の島々の影が見えた。たくさんの人々が見晴らしのいいその場所で立ち止まり、口々に「本当にきれいだね」、「すばらしいな」と言っているのが聞こえる。実際、言葉を失うほどの美しさだ。写真を撮りながら、「神の国」に迷い込んだのではないかという錯覚に何度もとらわれた。実際、「神の国」に足を踏み入れた瞬間が何回かあったかもしれない。
 東京に吉野梅郷という梅林があり、神学生のあいだは毎年のようにそこを訪れていた。吉野梅郷が満開になったときの美しさも、また言葉に尽くしがたい。どちらも、この世離れした美しさを持っていて優劣をつけがたいが、梅の密集度では吉野梅郷が勝ると思う。しかし、菜の花や海などの要素がある綾部山梅林には梅だけではない楽しみがある。敷地が広いために、観光客の多さもそれほど気にならない。広大な敷地のあちこちに入り込んで、みんな思い思いの場所でお弁当を広げている。わたしも、梅林の奥に入って行って見晴らしのいい場所を見つけ、そこでお弁当を食べた。
 こんな風景の中にいると、神の愛を信じるのは簡単だ。梅や菜の花の一輪一輪に、それを見ている人達のうれしそうな笑顔の一つ一つに、神の愛があふれ出している。神の愛を全身で受けながら、心も身体も癒されていくのを感じる。この喜びを、教会で出会うすべての人たちに分かち合っていければいいと思う。







※写真の解説…綾部山梅林にて。