フォト・エッセイ(107) 山笑う②


 そうやって1時間あまりが過ぎた。空はまだ雲に覆われていたが、歩き始めることにした。薄暗い山道を歩いているうちに、また「残念だなぁ。青空と光があればもっといいのに」という思いが浮かんできた。そういう風に考え始めると、だんだん他のいやなことも思い出されて大声を出したい気分になってきた。どうせ誰も周りにいないし、我慢する必要もない。思い切って大声で叫ぶことにした。何を叫んだか書くことはできないが、普段たまっているストレスを声に出したという感じだ。
 しばらく叫びながら歩いているうちに、気持ちがまた晴れ晴れとしてきた。よく考えれば曇り空には曇り空の美しさがあるし、別に青空にこだわる必要もない。いろいろないやな出来事にしても、神様の前ではどうでもいいようなことばかりだ。ときには感情を開放して、大きな声を出してみるのもいいかもしれない。神様は、そんな叫び声も受け止めてくださる方だ。
 森林植物園では、先週まだ開花を始めたばかりだったシャクナゲが満開になっていた。シャクナゲツツジ、ヤマブキなどの写真を撮りながら園内を歩き回っているうちに、雲のあいだから青空がまた顔をのぞかせ始めた。もう3時近くになっていたが、せっかくの青空なので植物園を出てまた山道を歩き始めることにした。徳川道を通って森林植物園に入ったのだが、徳川道はさらに植物園の東門辺りからトゥエンティクロスという道に続いている。昔は、道の途中に20か所も川を渡る地点があり(クロス)があり、それが道の名の由来になったという。生田川上流の渓流に沿った美しい道だ。その道を歩いて新神戸駅まで出ることにした。
 全部でいったい何キロ歩いたのか分からないが、昨日は本当によく歩いた1日だった。新緑の輝きをたっぷり浴びて、心も体も軽くなったような気がする。今度は、青年会の若者たちや教会学校のリーダーたちも連れて摩耶山に登ろうと思う。







※写真の解説…1、2枚目、六甲山の新緑。森林植物園にて。3、4枚目、トゥエンティクロスにて。