フォト・エッセイ(120) ラベンダーの季節②


 どうもわたしはラベンダーに弱い。香りが強すぎるという人もいるが、わたしはラベンダー畑に入って写真を撮り始めるとあの香りにすっかり魅了されてしまう。前後の見境をなくし、もう写真を撮っているというよりは「撮らされている」という感じになる。
 写真を撮る者にとって、このような状態は一般によくないこととされている。このような状態で撮った写真をあとで見ると、大概は「なんだ大したことなかったな」ということになるからだ。景色に魅了されながらも、どこか醒めた目を持って構図を考えたり、露出やPLフィルターの掛け方などを決めたりしなければあまりいい写真にはならない。これは、わたしの体験からもある程度まで言えることだ。
 普段の生活の中でも、きっと同じことが言えるだろう。目の前にあるものにどれほど魅せられていたとしても、どこかに醒めた目を持っていなければ感覚に踊らされているだけだ。気がついた時には、がっかりするような結果しか待っていないことが多い。
 ふと我に返って、しばらく呼吸を整えた。冷静に見ても十分美しく、「神の国」の輝きに満たされた紫だ。文章を書くにしても、写真を撮るにしても、冷静さを失わずにその輝きを言葉や映像にうまく定着し、人に伝えていくのがわたしの一つの使命なのだと思う。







※写真の解説…1-2枚目、ラベンダー。3枚目、カモミール。4枚目、ラベンダー畑の傍らに咲いたハクチョウソウ。