フォト・エッセイ(128)森林植物園のアジサイ①


 先週の初めごろから、待ちに待った雨が降り始めた。やれやれ、なんとか間に合ってくれた。あと数日も雨が降らなければ、もう今年のアジサイはだめかもしれないと覚悟していたところだった。
 木曜日、万を持して再び森林植物園に行ってきた。1週間前に行ったときは、ほとんどすべてのアジサイが灼熱の太陽の下でひからび、あたかも断末魔のような姿をさらしていた。あのアジサイがこの雨でいったいどこまで回復しただろう、期待と不安に胸を膨らませながら森林植物園までの道のりを歩いた。
 森林植物園に入って目を疑った。先週、死に絶えかけていた数万本のアジサイが、完全に息を吹き返していたからだ。前日までに降った雨をたっぷり吸いこんだアジサイは、花のすみずみまで鮮やかな青や紫に色づき、本来の美しさを存分に発揮していた。太陽の光を浴びて色とりどりに輝くアジサイの花たちの美しさは、思わず目を疑うほどだった。まるで、サファイアアメジストの宝石箱をひっくり返したかのようなまばゆさだ。関西最大のアジサイ名所、神戸市立森林植物園がようやく本来の力を見せてくれたようだ。
 実は、このあいだの木曜日、わたしは朝からとても疲れていた。さまざまな行事が続いて、疲労が蓄積されすぎたのだと思う。それでも森林植物園に行ったのは、ある意味で意地だったと言っていい。しかし、アジサイたちの美しさはそんなわたしにさえ夢中にさせるほどのものだった。気がつくと、無数のアジサイに囲まれながらシャッターを押し続けていた。







※写真の解説…森林植物園にて。