フォト・エッセイ(130)霧の森林植物園①


 森林植物園からトウェンティクロスを経て新神戸まで歩いた。2週間前と逆のコースだ。
 狙いはアジサイだった。朝、「摩耶山頂の自然観察園か、それとも森林植物園か」と思いながら教会の窓から六甲山を見上げると、山のかなり低いところまで雲が降りて来ていた。これでは山上での撮影は無理だなと思ったので、電車で森林植物園に向かうことにした。
 北神急行で六甲山の反対側にある谷上に行き、電車を乗り換えようとして驚いた。駅の周辺が、濃密な霧に包みこまれていたのだ。霧は、山の方からどんどん下に降りてきているようだった。この辺りは標高が高いので、山にかかった雲が街にまで流れ込んでくるのだろう。北鈴蘭台駅で降りて、森林植物園行きのパスを待ちながらあたりを見回していたが、10メートル先くらいのものも霞んで見えるくらいの深い霧だ。霧の中から道を下ってくる人の姿が少しずつ表れてくるようすが幻想的だった。
 霧に包まれた森林植物園は、いつもと違った美しさを見せてくれた。アジサイにしても、森林の木々にしても、長谷池のスイレンにしても、いつもよりおごそかで神秘的に見えた。園内をあちこち歩き回って写真を撮ったが、まるでどこか知らないところを歩いているような気がした。







※写真の解説…1-3枚目、森林植物園にて。4枚目、長谷池のスイレン