フォト・エッセイ(133)神宿る森①


 伊勢神宮に行ってきた。生まれて初めてのことだ。そもそも、これまで三重県に足を踏み入れたことがなかった。埼玉県で生まれたわたしにとって、伊勢は自分とは無関係な遠いところにある聖地でしかなかったのだ。
 ところが、調べてみると神戸からは近鉄特急を使ってわずか2時間半で伊勢市に到着することができる。伊勢市駅から神宮の外宮までは歩いて10分だ。そのことを知ったとき「よし、伊勢参りだ」と思った。朝6時過ぎの電車に乗って9時半頃、伊勢宮に到着した。
 伊勢神宮は外宮と内宮の2か所から成り立っている神社だ。天皇家は、内宮に祭られている天照大御神の子孫だと言われている。なにしろ、わたしが説明するまでもなく日本で最も由緒正しい神社だ。お参りするためには、外宮から内宮に回るのが一般的なコースらしい。
 伊勢市駅から歩いて外宮を目指した。10分ほどで外宮の入口にかかる橋に到着した。周りの人々にならって、神宮の方向に一礼してから橋を渡った。
 外宮に足を踏み入れた瞬間から、外の世界とは違うものを感じた。空気の透明度が違う、歩いている人々の足取りが違う、木々の太さと高さが違う。それらの微妙な違和感を通して、2000年の歴史の重みが全身に迫ってくるような感じがした。「これが伊勢か」と、つぶやかずにいられなかった。






※写真の解説…伊勢神宮、外宮にて。