フォト・エッセイ(134)神宿る森②


 天を衝くほど高く伸びた杉や楠木の巨木の間をしばらく歩いて行くと、本殿の前に出た。全国の神宮の頂点に立つ神社にしては、意外と小さな本殿だった。作りも簡素だ。白木の柱だけで組み上げられ、装飾は最小限に抑えられている。屋根の上に並んだ丸い木の柱と、両端につけられたV字型の飾りが特徴的だ。
 そのひっそりした本殿のたたずまいに、わたしはとても好感をもった。20年ごとに建て替えられるその簡素な建物は、人間のはかなさと小ささをはっきりと教えてくれる。天地に宿る神々を祭るのに、ちょうどふさわしい建物だ。樹齢数百年の巨木たちが、その建物を圧するかのように周りから取り囲んでいる。
 巨木に挟まれた参道を通って、いくつかの社を見て回った。次々に現れる杉や楠木の大きさに圧倒される思いだった。木々のあいだから細く差し込んでくる日の光が巨木の幹を照らし出したとき、その光輝く幹の中にはっきりと神の存在を感じた。この森には、明らかに神が宿っている。この森は、神の世界へと通じる森なのだ。







※写真の解説…伊勢神宮、外宮にて。4枚目、勾玉の池。