フォト・エッセイ(137)生田川遠足②


 雌滝を後にして、雄滝に向かった。雄滝はさらに10分ほど上流に歩いたところにある。途中、足もとの崖の下を土色の濁流が激しく流れ下っているのが見えた。見ていると怖くなるほどの激しさだった。落ちたらひとたまりもない。まるでどこか外国の山の中に迷い込んでしまったような錯覚にとらわれた。
 雄滝が見えてきたとき、おもわず膝が震えた。一緒に行った若者たちも口々に感嘆の声を上げていた。おそらくいつもの3倍くらいの水量だろう。流れ落ちる水で滝が崩れるのではないかというくらいの勢いだ。興奮して写真を撮っているわたしを見て、あとから上がってきたおじいさんが「わたしは毎朝ここまで歩いて来ていてもう何百回もこの滝を見ているが、こんなのは初めてですよ」とやはり興奮気味の声で教えてくれた。わたしは毎日登るわけでもないから、こんな場面に出くわすのはおそらくこれが最初で最後だろう。
 30分ほど滝のそばにとどまって写真を撮ったが、ここだけでもう1日分の写真を撮ったという気持ちになった。そこからさらに布引貯水池を経由して市ヶ原まで進んだ。そこで大きな河原に出て、お弁当を食べることにした。滝を見たときは先のことが少し心配になったが、幸いなことに貯水池から上はほとんど増水していなかった。天気もまずまずだった。雲のあいだから薄日が差し、ところどころには青空も見えていた。
 マシア神父さんの作ってきてくれたスパニッシュオムレツを食べたり、川に入って遊んだり、沢ガニを追いかけたり、そこでしばらく幸せなひと時を過ごした。他にもいくつかのグループがバーベキューをしたり、水遊びをしたりして思い思いの休日を楽しんでいた。






※写真の解説…1枚目、雄滝の滝壺。2枚目、生田川上流。3枚目、沢ガニ。4枚目、スパニッシュオムレツを持ったマシア神父。