カルカッタ報告(48)8月27日インド博物館⑤


 いろいろなことを考えながら展示物を見ているうちに、あっという間に集合の時間が近付いてきた。わたしは仏像や神像を展示している部屋を出て、他の部屋をざっと見て回ることにした。
 動物学の展示室でクジラの標本を見つけた時はとてもうれしかった。体長15mほどの、巨大なシロナガスクジラの標本だ。当時、この標本がインド博物館の中でわたしの一番のお気に入りだった。これほど巨大な生き物が海の中を悠々と泳いでいる姿を想像すると、なんだか胸がわくわくしてくる。
 いくつ目かの部屋でメンバーの女性と出くわしたので感想を聞くと、一言「趣味が悪い」とのことだった。動物学の展示室に置いてあったホルマリン漬けの中の一つに、人間の胎児のホルマリン漬けがあったそうだ。おそらく死産した赤ん坊のものだろうが、確かに趣味が悪いことには違いない。歴史に深く興味を持ち、日本でもあちこちの博物館を訪ねている彼女でさえ、この博物館にはなじめなかったようだ。
 時間になったので集合場所に行くと、他のメンバーたちはもうほとんど集まっていた。みな口々に「大した展示物がない」、「意味がよく分からない」と言っていた。だからわたしが初めに言ったのにと思ったが、まあ何事も体験してみなければわからないものだ。ポジティブに考えるなら、すべてのものが混じり合い共存するインド的混沌がこの博物館にも反映されているということなのかもしれない。
 きれいな中庭を背景にして記念写真を撮ったあと、わたしたちは博物館を出てチョーロンギー通りをエスプラネード方面に向かって歩き始めた。幸い、まだ雨はやんだままだった。雨が降り始める前に、なんとかハウラー橋までたどり着きたい。
※写真の解説…インド博物館の回廊。