カルカッタ報告(50)8月27日エスプラネード②


 エスプラネード(esplanade)というのは、そもそも英語で遊歩道を意味している。カルカッタのセントラル・パークとも言うべきマイ・ダーンの北端に、かつて快適な遊歩道があったらしい。それがそのまま固有名詞化して地名になった。その辺りは、今では大きなバスターミナルになっている。ここからダルハウジー・スクエア辺りまではカルカッタの政治、経済の中心地で、毎日たくさんの人がバスで通勤して来る。
 ここからフーグリー川方面に進んでいくためには、何カ所か大きな通りを横断しなければならない。大きなバスやトラックが次々と疾走してくる道を渡るのは、信号があるとはいえなかなか大変なことだ。わたしたちがタイミングをとれずにまごついていると、耳にヘッドフォンを入れた大学生風の若者が、車が途切れたところを見計らって「渡れ」と手で合図してくれた。
 わたしたちはその若者と、道を渡ってからしばらく一緒の方向に歩くことになった。彼は人懐っこくわたしに英語で話しかけてきた。道端で話しかけてくるインド人をわたしはあまり信用しないようにしているが、今回の場合はわたしたちを騙そうとして近寄ってきたようには見えなかったので話し相手になることにした。
 わたしが日本から来たことを告げると、彼は片言で「こんにちは」と挨拶してくれた。なんと兄弟が日本で働いているという。それで日本人を見て話しかけてきたらしい。どこの出身かと尋ねるとダージリンだという。ダージリンユースホステルにしばらく滞在したことがあるという話しをし、ダージリンから見えるヒマラヤの美しさを称賛すると、彼はとても喜んでくれた。彼は今、カルカッタの大学でコンピューターの勉強をしているそうだ。お兄さんと同じように、世界を股にかけて働くIT技術者になるのが夢だという。
 そんなことを話しながらしばらく歩いていくと、左手にイーデン・ガーデンと呼ばれる巨大なクリケット・スタジアムが見えてきた。その辺りで、若者は別の方向へと歩き去って行った。とても気持ちのいい若者だった。彼のような若者が、21世紀のインドの発展を支えていくのだろう。
※写真の解説…エスプラネードのシンボル、メトロポリタン・ビルディング。