カルカッタ報告(62)8月28日Br.ジェフ③


 サージ神父のパソコン談義が一段落したところで、わたしはBr.ジェフに最近のカルカッタの様子を尋ねてみた。見たところ昔よりもだいぶ豊かになったようだが、実際はどうなのかということだ。
 「確かに道路などのインフラが整備されたし、市場で売られている物が増えた。だから、あなたがそういう印象を受けたのは無理もないが、実際はずいぶん違う」、とBr.ジェフは言った。貧しい人たちが置かれている状況は昔とほとんど変わっていないし、むしろ悪くなってさえいるというのだ。
 例えば、州立病院の貧しい人に対する治療は、今でも「死を待つ人の家」での治療に遠く及ばないほど劣悪だという。道端で行き倒れになってウジ虫に食われているような人の姿はほとんど見られなくなったが、今でもどこからそのような人が発見されて「死を待つ人の家」に連れてこられることがあるそうだ。
 貧富の差が拡大し、街に物があふれ始めた結果、犯罪も増えているという。豊かな物資を見せつけられた貧しい人たちが、窃盗など犯罪に手を染め始めたというのだ。「カルカッタは昔のように安全な街ではない」とBr.ジェフは悲しそうに言った。姿の見えない貧困が、カルカッタの街に広がりつつあるということだろう。
 そろそろいい時間になったので、わたしたちは話を切り上げてそれぞれの仕事に向かうことにした。わたしは、Br.ジェフにちょっとだけ時間をくれないかと頼んだ。うちのメンバーたちに紹介したかったからだ。Br.ジェフは快く承諾してくれた。中庭に続く階段を2人で下りながらBr.ジェフは「わたしがマザー・ハウスの朝のミサに来ることは、年に数回しかないんだ」と言っていた。わたしがBr.ジェフと再会できたのは、本当に奇遇なことだったと言わざるをえない。
 メンバーたちをボランティア・ルームから連れて来て、マザーのブロンズ像の前でBr.ジェフと一緒に記念撮影した。思いがけずM.C.のもう1人の総長にであって、みな少し戸惑っているようだった。
※写真の解説…ヤシの繊維や洗剤などを売る露店。