カルカッタ報告(67)8月28日人力車①


 ホセ・イグナシオと別れたあと、わたしはサダル・ストリートの両替屋さんで円をルピーに替えた。円が高くなったせいで、1ルピーがちょうど2円くらいだった。このくらいのレートだと5,000円くらいの両替でも分厚い札束が返ってくるので、なんだかお金持ちになったような気分になる。
 両替を済ませた後、わたしは人力車でホテルまで帰ることにした。午前中のボランティアで疲れていたこともあるが、久しぶりに人力車に乗ってみたいという気持ちも強かった。ブルー・スカイ・カフェの辺りで客待ちしていた若い人力車引きの男性と値段交渉し、50ルピーでホテルまで行ってもらうことにした。
 あとで聞くと、今の相場ではサダル・ストリートからマザー・ハウスまでが20ルピーほどだという。15分も一生懸命に人力車を引いて、40円にしかならないのだ。頑張って40円稼いでも、そのうちの半分は人力車の持ち主である親分に支払わなければならない。それでも他に生活の手段がないので、彼らは懸命に人力車を引き続ける。
 カルカッタの人力車引きの大半は、カルカッタの後背地であるビハール州の農村から出てきた人々だ。飢饉に見舞われた農村から身一つで出てきて、人力車引きや建設現場の労働者、荷揚げ人夫などになるというのが一般的らしい。彼らの稼ぎは、どんなに頑張っても1日数百円にしかならない。それでも、インドでは総人口の25%に当たる約3億人が1日100円以下の収入で生活していることを考えれば、まだ恵まれているのだ。彼らの多くは、夜になると出稼ぎ労働者用の安宿か路上で眠る。食事は1日2食だ。そうやって倹約して貯めたお金を、彼らの多くは故郷の家族に送金している。今、わたしを乗せて走っているこの男性も、おそらくそんな生活をしているのだろう。
※写真の解説…人力車の荷台から見た街の風景。