カルカッタ報告(70)8月28日タゴール・ハウス


 タゴール・ハウスは、インドを代表する詩人にしてアジア人で初のノーベル賞受賞者、ラビントラナート・タゴールの家だ。日本でも彼の詩集『ギータンジャリ』は度たび翻訳されている。わたしも学生時代に読んで、詩に読み込まれたヒンドゥー教の崇高な理想に感動した覚えがある。
  家の敷地に入ってわたしたちは驚き呆れた。まるで宮殿のような建物で、個人の家とは思えないほど立派だったからだ。家の入口辺りにはタゴールのブロンズ像が飾られていた。ポーロさんに案内されるまま、わたしたちは家の中に入ることにした。
 家の中は、タゴールの資料館と彼が収集した美術品の展示館になっていた。わたしはタゴールのことをあまり知らなかったのだが、日本にも何度か来たことがあるらしい。岡倉天心らと一緒に和服で写っている写真が飾られていた。当時の社会情勢を考えれば、海外旅行を何度もしたというだけでもすごいことだ。彼が収集したという絵画のコレクションも、それは立派なものだった。タゴール家の裕福さは、計り知れないものだったらしい。タゴールは、シャンティニケタンにある自分が創立した大学に行くために、自分だけの特別列車さえ持っていたという。
 そんな訳で、タゴールの詩人としての偉大さをよく知らないわたしたちは、カルカッタでもお金持ちはとてつもなく豊かな生活をしているらしいという印象だけを強く持ってタゴール・ハウスを後にした。「貧富の差」という以上は富の方もある程度知らなければならないはずだから、その意味ではいい勉強になったと思う。 

※写真の解説…1枚目、タゴール・ハウスの外観。2枚目、タゴール・ハウスの中庭。