カルカッタ報告(88)8月29日「夕の祈り」


 ホテルに着いたとき、時刻はもう5時を過ぎていた。30分ほど昼寝をして目を覚ました。ふと窓の外を見ると、夕方の太陽が隣のビルの壁を赤く照らしているのが見えた。もしかすると、今なら屋上から夕日が見えるかもしれない。そう思ったわたしはすばやく身支度を整えてホテルの屋上に上がった。
 長期で滞在していた頃は、ときどきこのホテルの屋上に上がって街の風景を見たものだった。8階建てのビルだからそれほど高くはないのだが、周辺にここより高い建物がほとんどないこともあって、このホテルの屋上からはとてもいい景色を見ることができる。1995年の皆既日食のときには、ホテルの従業員さんたちと一緒にここの屋上から空を見上げたものだった。
 階段を使って屋上に駆け上がると、ちょうど今にも夕日がカルカッタの街並みの向こうに沈むところだった。遠くには、ニュー・ハウラー橋のワイヤーも見えていた。深く胸に染み入る光景だった。これも、神様が準備してくださったプレゼントの1つだろう。「夕の祈り」の時間が迫っていたので、わたしはその光景をすばやく写真に収めてマザー・ハウスに向かうことにした。
 マザー・ハウスに到着したのは、「夕の祈り」が始まる5分ほど前だった。聖堂に入るとすぐにシスターが近付いてきて、わたしに聖体顕示を依頼した。わたしは香部屋に行って祭服を着、6時ちょうどに入堂して聖櫃から御聖体を出し、祭壇の上に置かれた聖体顕示台の中に収めた。
 式が終わった後、わたしは祭服を脱いで、ボランティアたちが祈っている中に戻った。落ち着いてくると、この数日に起こった出来事が次々に脳裏をよぎった。マザーの墓前でのミサ、ヘンリー大司教との再会、Sr.マーガレット・メリーの墓参り、ニムタラ・ガートでのミサなど、どれ1つとっても一生忘れられないような出来事ばかりだ。この体験を祈りの中でしっかり胸に刻みつけ、その記憶を通して神の恵みをいつまでも感じ続けたいと思った。
 祈りの中で、この旅を実現させてくれた神に感謝し、またこの旅の実現のために祈ってくれたSr.マーガレット・メリーに心から感謝せずにいられなかった。姿は見えないが、シスターたちの言葉を通してあちこちでSr.マーガレット・メリーが残してくれた思いを感じ取ることができる。彼女もまた、生きているのだ。姿は見えないが、わたしたちのこの旅を守ってくれているのだと強く感じた。
 1時間が過ぎ、シスターがまたわたしを呼び出した。わたしは祭服に着替えて、祭壇に進み出た。聖体顕示台に収められた御聖体で一同を祝福し、御聖体を聖櫃に戻すのがわたしの役割だった。「神の愛の宣教者会」への心からの感謝をこめて、わたしは御聖体を高く上げ、一同を祝福した。司祭になって、本当によかったと思う。
※写真の解説…夕暮れ時のカルカッタの街。