やぎぃの日記(71)ルイス・カンガス神父②


 黙想が明けた日に、山口教会で田丸神父の最終誓願式があり、修道院で大きな祝賀会が行われた。その最中に見た出来事が、カンガス神父をわたしのヒーローにしてしまった。
 祝賀会には50人ほどが招かれていたが、その日、あいにく修道院には賄いさんが1人しかいなかった。そのことを知っているカンガス神父は、最初の皿が終わって洗い物が出始めたところですかさず立ち上がって台所に入り、賄いさんと一緒に洗い物を始めた。そうやって数百に及ぶ皿やスプーン、フォークなどを洗い終えたころには、祝賀会はほとんど終わりに近づいていた。そこでようやくカンガス神父は席に戻り、残り物の中から食事をとられた。
 しばらく食事をとられた後、カンガス神父は再び台所に入って残りの洗い物を片づけた。さらに、テーブルを元の位置に戻したり、椅子を片づけたりされ、全てが終わったところでようやく部屋に戻られたのだった。立ち去り際に、賄いさんに深々と頭を下げ「今日は本当にありがとうございました」と言ったカンガス神父の姿を、わたしは一生忘れないだろう。
 その間わたしも彼の横で手伝っていたが、カンガス神父は自分だけが洗い物をし、他の人たちが手伝わないことについて最後まで一言も文句を言わなかった。むしろ、みんなのために喜んで自分を捧げている様子だった。黙想指導のあいだに「片柳さん、もうわたしくらいの歳になると残っているのは感謝だけですよ」と述懐しておられたが、カンガス神父はまさに日々を喜びと感謝の中で生きておられるのだろう。
※写真の解説…カンガス神父が現在、働いておられるカトリック山口教会。