「マザー・テレサの言葉を読む」(1)小さなことに大きな愛を

「大切なのは、どれだけ大きなことをするかではなく、
小さなことにどれだけ大きな愛を込めるかです。」

 世の中の基準で言えば、大切なのは何か大きなことをして有名になったり偉くなったりすることでしょう。ですが、マザー・テレサはそんなことよりも「小さなことに大きな愛を込める」ことが大切だと言います。一体、マザーは何を基準にしてそんなことを言っていたのでしょう。
 それは、一言でいえば「神への愛」という基準だと思います。「神の愛の宣教者会」はそもそも十字架上で人類の愛に渇いているイエスの渇きを癒すために生まれたものであり、マザー・テレサにとっては「イエスの渇きを癒すこと」、つまり「神を愛すること」が何よりも大切でした。
 この基準に立つならば、世間的に見て「大きなこと」をするかどうかは問題ではありません。なぜなら、「大きなこと」というのは所詮人間の目から見て「大きなこと」にすぎず、神から見たときにそれが「大きなこと」かどうかはまったく分からないからです。逆に、人間の目には「小さな」ことにすぎなくても、神の目には「大きなこと」である場合もありえます。
 それに世間的に見て「大きなこと」をしたいと願うとき、その動機はほとんどの場合「大きなこと」をして自分が有名になりたい、偉くなりたいというようなものです。神はどうでもよく、自分のために世間から見て「大きなこと」をしているのです。
 「神への愛」という基準に照らせば、大切なのは人間の目を基準にして自分のために「大きなこと」をするということではありません。むしろ大切なのは、神の目を基準にして、人間の目には「小さなこと」であったとしてもそれを神のために心を込めて行うことでしょう。自分が偉くなるために大きな事業を成し遂げるよりも、神への愛、家族への愛ゆえに自分を捨て、毎日の家事に心を込めることの方が神の目には「大きなこと」であるかもしれないのです。