マザー・テレサの言葉を読む(10)なんでも笑顔で


「神が与えてくださるものは何でも笑顔で受け取り、
 取り去られるものは何でも笑顔で差し出しなさい。」

 神が与えてくださるものはなんでも喜んで受け取るべきだし、逆に取り去られるものは何でも喜んで差し出しなさいとマザーは言います。なぜなら、神はわたしたちのすべてを知った上で、わたしたちの魂の救いのために必要なものだけ与えてくださる方、必要のないものは取り去ってくださる方だからです。
 わたしたちはほとんどの場合、自分のために何が必要なのかを知りません。きれいな服が欲しくてたまらなくなり、一生懸命にお金をためて買ったけれど、買ってみたら自分には似合わなかった。通信販売でこれは便利だと思って買ってみたけれど、実際はほとんど役に立たなかった。そんなことがよくあります。買い物の失敗くらいですめばいいですが、あの地位に着きさえすれば、あの仕事に成功しさえすれば、あの学位さえされれば、というような執着に取りつかれて一生を棒に振ってしまうことさえありえます。
 わたしたちが何を本当に必要としているのかをご存じなのは、神だけです。神はわたしたち自身でさえ知らないわたしたちの心の奥深くにある望みを見通し、その望みを満たすために必要なものを与えてくださいます。逆に、そのために必要のないものは取り去られるのです。
 ときに、神の判断はわたしたちの目には理不尽に映ることもあります。自分にはこれが絶対に必要だと思えるものが急に取り去られて必要ないものが与えられること、例えば健康が取り去られて病が与えられる、富が取り去られて貧しさが与えられるというようなことがよくあるのです。
 そんなとき、必要なのは神への全面的な信頼だと思います。わたしたちのすべてをご存じで、わたしたちを愛してやまない神が、わたしたちに悪いことをするはずがありません。神が何かを取り去られるのはそれが今の自分には必要ないからであり、何かを与えられるのは今の自分にそれが必要だからなのです。
 わたしは自分自身のことさえよく知らないが、神はわたしのことをすべてご存じで、わたしにとって一番いいように全てを計らってくださる。そのことを心から信じられさえすれば、神が取り去られるものはなんでも笑顔で差し出し、神が与えてくださるものは何でも笑顔で受け取ることができるでしょう。冒頭の言葉を通してマザーはわたしたちに、「安心してすべてを神に委ねなさい」と語りかけているのです。