バイブル・エッセイ(139)アネハヅルの飛翔


 旬祭の日が来て、一同が一つになって集まっていると、突然、激しい風が吹いて来るような音が天から聞こえ、彼らが座っていた家中に響いた。そして、炎のような舌が分かれ分かれに現れ、一人一人の上にとどまった。すると、一同は聖霊に満たされ、“霊”が語らせるままに、ほかの国々の言葉で話しだした。(使徒2:1-4)
 聖霊が激しい風のように弟子たちのあいだを吹き抜けてゆきます。その情景を想像しながら、わたしは昔テレビで見た一つの場面を思い出しました。それは、アネハヅルという鳥が風に乗り、ヒマラヤ山脈を越えて飛んでゆく場面です。
 アネハヅルは体長70-80㎝くらいの小型の鶴ですが、越冬のためにヒマラヤ山脈を越えて渡りをすることで知られています。ヒマラヤ山脈を前にしたアネハヅルたちは、小さな羽根をいっぱいに広げ、山麓に吹く強い風を全身で受けて高く高く舞い上がっていきます。そしてついに高度8000mにまで達し、ヒマラヤの峰を越えて中国へと飛んでゆくのです。
 この鶴の姿を、わたしたちと重ね合わせてみたらどうでしょう。わたしたちも、小さな心の翼をいっぱいに広げて聖霊の風に乗るなら、高く高く舞い上がっていくことができるかもしれません。全身で聖霊の風を受けるなら、はるか「神の国」にまで飛んでいくことさえできそうです。
 今、この聖堂にも聖霊の風が吹いています。わたしは皆さんの方から風が吹いてくるのを感じますし、みなさんは祭壇から、御聖体から風が吹いてくるのを感じることができるでしょう。心の翼をいっぱいに広げ、全身でこの風を受け止めましょう。心配や不安に駆られて小さくなっていては高く飛ぶことができません。神に全てを委ね、聖霊の風に身を任せましょう。
 心の翼をいっぱいに広げて聖霊の風に身を任せるなら、アネハヅルたちのようにどこまでも高く飛んで、いつの日か「神の国」に到達することができるでしょう。
※写真の解説…ダージリンの街から見たヒマラヤ山脈。一番高いのが、カンチェンジュンガ