バイブル・エッセイ(152)殻を破って光の中へ


 そのときイエスはこうお答えになった。「人の子が栄光を受ける時が来た。はっきり言っておく。一粒の麦は、地に落ちて死ななければ、一粒のままである。だが、死ねば、多くの実を結ぶ。自分の命を愛する者は、それを失うが、この世で自分の命を憎む人は、それを保って永遠の命に至る。わたしに仕えようとする者は、わたしに従え。そうすれば、わたしのいるところに、わたしに仕える者もいることになる。わたしに仕える者がいれば、父はその人を大切にしてくださる。」(ヨハネ12:23-26)
 一粒の麦が自分の殻を破って芽を出し、成長していくと、やがてたくさんの実を結びます。それと同じように、人間も自分の殻を破って成長していくなら、やがて永遠の命を与えられるだろうとイエスはおっしゃいます。
 わたしたちは、自分の殻の中に閉じこもっている一粒の麦のようになっていることがないでしょうか。自分の殻の中で自分のことだけを考え、周りの人との間に壁を作ってぬくぬくとしているとき、わたしたちは小さな一粒の麦のようです。その麦は闇の中にいるのですが、殻の外に出て光と出会ったことがないので、自分が闇の中にいることにさえ気づきません。ぬくぬくした闇はある意味で心地よいかもしれませんが、他人を見下したり、無視したり、自分の力にうぬぼれたりする心は、やがて腐って自分自身を滅ぼしてしまうでしょう。
 もしわたしたちが思いきって自分の殻を破るなら、外には神の恵みの光に溢れた世界が待っています。殻を破ったわたしたちは、神の恵みの光を全身に浴びてまっすぐ成長し、やがて永遠の命に移されていくでしょう。小さな一粒の麦で終わらないために、自分が殻の闇の中に閉じこもっていないかにいつも気をつけていたいものです。そしてもし殻を見つけたら、殻の中に閉じこもって自分を守ろうとするのではなく、殻を破って自分のありのままを神の光にさらす勇気を持ちたいものです。
※写真の解説…日光、戦場ヶ原の遊歩道にて。