マニラ日記(1)マニラ到着Ⅰ


飛行機の窓から見た神戸の街。
9月4日(土) マニラ到着
 昨日の午後、無事マニラに到着した。関西空港からの飛行時間は3時間半ほど。飛び立ってすぐに飛行機の窓から神戸の街が見えたときは、さすがに心が震えた。空からお別れを言うために神様が準備してくれた景色のように思えたからだ。神戸在任中に何度も登った六甲山だけが、飛行機の中のわたしに気づいてくれたようだった。
 マニラ空港から第三修練院のあるアテネオ・デ・マニラ大学まで、タクシーで1時間ちょっとかかった。途中で金曜日のラッシュに巻き込まれたが、それもマニラに到着したのだという実感を深めてくれた。運転手さんが嘆いていたが、マニラの交通渋滞は今も昔もあまり変わっていないようだ。
 第三修練院のあるイエズス会フィリピン管区の神学院Loyola House of Studiesは、イエズス会が経営するアテネオ・デ・マニラ大学の中にある。限られた富裕層の人々だけが学費を支払うことができる、いわゆる「名門」の私立大学だ。神学院の建物は、キャンパスのやや奥まったところにある。鉄筋コンクリートの5階建ての建物2棟から成り、建物の間に主聖堂や食堂が設けられている。
 第三修練院はこの建物の1棟の5階に設けられている。複雑な作りの建物の中を、迎えに出てくれたフィリピン人の第三修練者に案内されながら5階まで上がっていくと、数日前に到着していた2人のインドネシア人司祭と韓国人司祭が歓迎してくれた。今回の第三修練共同体は、カナダ人の修練長以下、エクアドルアメリカ、スリランカ、韓国、日本、フィリピン、インドネシアの7か国から集まった修練者たちからなる国際的なものだ。
 一休みしてから、まず初めに隣の建物に住んでいるマニラ在住の唯一の日本人イエズス会員、松本紘一神父を訪ねた。松本神父はもう3年も前からイエズス会国際神学院Arupe Houseで院長をしている。日本管区の前の管区長で、わたしも神学生時代にずいぶんお世話になった。多国籍からなる神学生たちとの関係で苦労されているらしいという話も聞いていたが、とてもくつろいだ様子で迎えてくださったので安心した。
 神学院の中を歩いていると、何人かから「ヒロシ!」と声をかけられた。10年前に一緒に修練をした仲間たちや、バンコク、ソウルなどいろいろなところでこれまでに出会ったイエズス会の仲間たちだった。マニラはイエズス会の東アジア宣教における最大の拠点なので、東アジア中から神学生、司祭たちが勉強や訓練のために集まってくるのだ。
 たくさんの再会のあと部屋に戻ってベッドに横になり、そのまま寝込んでしまった。気づくともう真夜中で、晩御飯の時間はとっくに終わっていた。仕方がないので休憩室のラーメンを食べてお腹を満たし、再び眠りについた。なにしろ疲れているらしい。

飛行機の窓から見たマニラの街。