マニラ日記(17)再定住エリアⅠ


10月11日(日) 再定住エリア
 ナボタスのスラム実習をお膳立てしてくれたNGOが、マニラの郊外にスラム住民たちのための再定住エリアを準備しているというので見学してきた。スラム街の人口過剰を解消するために、ある程度生活にゆとりがある家族に郊外の家を提供し、再定住を促す計画だという。
 神学院を朝早くに出発して、わたしたちはブラカン市にある再定住エリアを目指した。マニラから車で1時間も走ると、車窓からどこまでも広がる緑の丘陵地帯が見えてくる。ところどころに大きなセメント工場と石灰採掘の爪痕があるものの、とても美しい景色だ。大都市の近郊にほぼ手つかずの自然が残っていることに驚かされる。日曜日で道が空いていたので、およそ1時間半ほどで豊かな緑に囲まれた再定住エリアに到着した。
 野球4つ分くらいの敷地の中に、すでに5軒ほどの家が建てられていた。1軒の価格は土地を含めて150万円ほどで、全部で70軒建てて分譲する計画だという。びっくりしたのは、この住宅の設計者が横浜教区の司祭で建築家の岩間勉師だったことだ。岩間師とは、お互いにまだ神学生になる前、山谷の「神の愛の宣教者会」で一緒にボランティアをしていたことがある。まさかこんなところで彼の作品に出会うとは思わなかった。
 ナボタスの居住環境から比べたら天と地ほど差のある美しい場所ではあるが、再定住には重大な問題が一つある。150万円の住宅購入費は25年ローンにできるからいいとしても、ローンを支払いつつ家族を養うだけの収入を得ることが郊外では非常に困難なのだ。ジプニーやバスを乗り継いでマニラの市街に通うには片道2-3時間かかる。再定住者への仕事の斡旋や有機農業の推進などによってその問題を解決していきたいと、NGOの職員さんたちは話していた。
※写真の解説…岩間勉神父の設計による、再定住用住宅。