マニラ日記(30)ハッピー・ランド訪問Ⅲ〜スラム街のミサ


スラム街のミサ
 海沿いの家々を回って歩いたあと、わたしたちはミサに出るためにハッピー・ランドの中心部にある教会へと向かった。スラム街の家屋の中にあっては大きくて立派な建物だが、それでも通常の教会に比べればずいぶん簡素だ。屋根の上に立てられた大きな十字架が、スラム街の真ん中に神の愛を証しているように見えた。
 わたしたちが到着すると、すでに教会からあふれるほどたくさんの人たちが日曜日のミサに集まっていた。建物の中に入りきれなかったからか、隣の家の屋根に上がって聖堂を見下ろしている子どももいた。その姿は、まるで木の上からイエスを見下ろしたザアカイのように見えた。司式司祭は、カノッサ修道会のカルロス神父というイタリア人の宣教師だった。もう何十年もこのスラムに通ってミサを立てているのだという。とても流暢なタガログ語で人々に語りかけておられる様子だった。
 典礼はとてもよく準備されていて、祭壇の前では子どもたちのグループが讃美歌に合わせて踊りを捧げていた。奉納の歌が始まったとき、わたしは耳を疑った。聖堂一杯の会衆が声を合わせ、わたしの第三修練仲間のマニュエル・フランシスコ神父が作詞作曲した「One More Gift」を歌い始めたのだ。「もし何かもう一つあなたに贈り物をお願いできるなら、どうぞこの地上に平和を実現してください」という歌詞で始まるこの曲がスラム街の真ん中の小さな教会で歌われているという事実に、わたしは深く感動した。貧しさの極みにありながら、この人たちは世界中の人々の平和のために祈っているのだ。
※写真の解説…スラム街の真ん中に建てられた教会。