マニラ日記(38)ラルシュ・プンラ訪問Ⅳ〜「幸せって何?」


4.「幸せって何?」
 土、日はお休みだったが、3日目、月曜日の午前には共同体の敷地の中にある施設でデイ・ケアが行われ、午後にはワーク・ショップも行われた。どちらも外部から6〜7人の参加者があり、共同体の仲間たちと合わせて十数人の賑やかな集まりだった。
 クリスマスが近いということもあって、午前中のデイ・ケアではダンスの練習が行われていた。驚いたのは、ダウン症の子どもたちがとても機敏な動きでダンスを披露してくれたことだ。わたしにはとても真似ができないようなリズミカルで複雑なダンスさえ、彼らは見事に踊っていた。
 彼らが踊っていた曲の一つの歌詞は、次のようなものだった。
「幸せって何?それは、5本の指があること。木に登れること。隣の人の手を握り締められること。
 仲間の顔が見られること。チョコレートが食べられること。友達とひそひそ話ができること。大きな声で歌えること。」

 何の特別なこともない普通の生活の中に幸せを見つけ出すラルシュの生活に、本当にふさわしい歌だと思う。そのような幸せを積み上げながら、彼らは365日を暮しているのだ。この歌に合わせてうれしそうに踊る仲間たちの姿を見ながら、何か特別なことがなければ幸せと思えなくなっている自分の姿を反省させられた。
 別れ際、見送りに出てくれたレトレットに「やっぱりラルシュは世界中どこに行ってもラルシュですね」と言うと、「そう、ラルシュはラルシュよ」という答えがすぐに返ってきた。その短い言葉が、今回の2泊3日のわたしの感想を要約しているように思えた。
※写真の解説…スタッフの指導を受けながら踊りの練習をする仲間たち。