マニラ日記(40)クリスマス実習1〜サガダ村②首狩りの風習


首狩りの風習
 死者を葬る洞窟や市場などを見学した後、エド神父はわたしたちを村の中心部にある小さな資料館に案内してくれた。原住民の女性が、私財を投じて作った私設の資料館だという。たまたまオーナーの女性自身がいたので、わたしたちは彼女から説明を聞くことにした。
 聞いていて驚いたことが2つあった。1つは展示品とは関係なく、彼女の英語のうまさだ。発音、文法など完璧と言っていいくらいの英語だった。この地域には、かつてたくさんのアメリカ人教師や宣教師がいたので、彼らから直接英語を習った世代の人々の中には彼女のような人がときにいるらしい。もう1つは、展示品の斧についての説明だった。なんとイゴロット族には20世紀前半まで首狩りの習慣があり、その斧は敵の首を狩るために使われていたのだという。いくつもの首を抱えて凱旋する戦士の白黒写真も見せてくれた。のどかな棚田での農作業と首狩りの風習がどう共存していたのか、本当に不思議だ。
 最後に、エド神父はわたしたちを自分の教会に連れて行ってくれた。教会の建物のすぐ前に、たき火を囲んで10人くらいの人が座れる円形の石組があるのが興味を惹いた。エド神父の説明によると、これは教会の長老たちが教会の運営方針について話し合いをするための場所なのだという。イゴロット族の古来の習慣が、教会運営にも取り入れられたのだそうだ。主任司祭は彼らの意見を尊重しながら教会を運営していくらしい。エド神父が苦笑いしていたところを見ると、なかなか手ごわい長老たちのようだ。
 今日1日でイゴロット族について色々なことを学んだが、どうしても気になるのは首狩りの話だ。これからわたしたちは彼らの村に行って2週間をすごすわけだが、大丈夫なんだろうか。キリスト教化されてからこの数十年、首狩りは行われていないということだから、まあきっと大丈夫なんだろう。
※写真の解説…イゴロット族の伝統的な武器について解説する原住民の女性。