マニラ日記(51)アリアワン村での葬儀ミサⅡ〜命の継承


命の継承
 葬儀ミサには、近隣の村々からも親類や教会の関係者がたくさん集まり、教会に入りきれないほどだった。杖をついた1人の老人は、自分の村から山道を3時間かけて歩いてきたと話していた。この辺りの村には車が通れるような道はないから、足の不自由な老人でも歩く以外にないのだ。
 20人ほどの孫たちが聖歌隊として参列した葬儀ミサは、悲しみの中にも希望を感じさせるものだった。帰天した女性の命が、確かにこの孫たちに引き継がれているとはっきり感じられたからだ。そのことを象徴しているのか、女性の遺体にかけられた糸を孫たちが引いて解き放つという儀式も行われていた。日本と違って焼香や献花はなかったが、その代わり参列者全員が棺に聖水を振るという儀式があった。
 ミサの後、遺体はすぐ近くにある墓に埋葬された。小さな家の形をした墓の中に遺体を棺ごと納め、密封するという埋葬方法だった。イエズス会員の埋葬も同じようにするから、きっとこのやり方がフィリピンの一般的な埋葬方法なのだろう。孫たちが見守る中、棺が納められた墓の入り口は白い漆喰でしっかりと塗り固められていった。
 すべての式が終わって、夕方4時頃ナトニン教会に戻ってきた。今日は、夜10時からクリスマスの深夜ミサが行われる。朝のミサからずっと動いているので、しばらく仮眠して夜に備えたいと思う。
※写真の解説…墓地の前で埋葬の様子を見守る親族たち。