忘れられたスラム街〜スモーキー・マウンテンからの報告7


・衛生状況
 この地域には給水設備だけでなく、下水設備もない。排水は、路地を流れるドブを通って海まで流れていく。このドブが地域の衛生状況を著しく悪くしていることは疑いがない。ボウフラの温床となって蚊を大量に発生させるし、放つ悪臭もすさまじい。臭いは家の中にも容赦なく侵入してくる。
 ゴミ捨て場が近いからハエが多いのは仕方がないだろう。だが、食事をしている最中にゴキブリが飛び回ったり、足元を巨大なドブネズミが通り過ぎたりしていくのには閉口した。あまりに大きいので、最初はウサギでも飼っているのかなと思ったが、しっぽの形からしてまぎれもなくネズミだった。それでも、まあ人間はたいがいのことに適応できるようで、最後にはほとんど気にならなくなった。
・食事
 ジェスがはりきって食事を準備してくれたので、食事で困ることはほとんどなかった。大量のご飯を、少ないが味の濃いおかずと一緒に食べるのがスラム街の食事の基本形のようだ。おかずの定番は干し魚で、すさまじく塩味が効いていた。わたしは短期間だからこれでもいいが、何年もこのような食事を続けたら体によくないことは明らかだろう。
・寝床
 フィリピンの貧しい家庭では、床板やマットレスの敷かれていないベッドの板の上に直接寝ることが多い。ガディタノ家でも、子どもたちは床板の上にじかに寝ていた。わたしは2段ベッドの1段目を与えられたが、そこにも敷物は何もなく、硬い板の上で寝るしかなかった。だがこれも慣れで、最初は背中や足が痛くてよく眠れなかったが、2週目からはなんとか眠れるようになった。近所からの騒音も夜遅くまで聞こえるので、眠るのも一苦労だ。
※写真の解説…子猫を抱いた少年。顔は炭で真っ黒に汚れている。