忘れられたスラム街〜スモーキー・マウンテンからの報告8


4.TNKの活動
 ガディタノ家にお世話になりながら、日中は毎日TNKが運営している子どもたちのためのセンターに行って、子どもたちと遊んだりミサを立てたりしていた。(TNKは、Tulay Nang Kabataanの略で「子どもたちへの架け橋」の意味。イエズス会の司祭が始めたNGO。)
 このセンターの主な活動は、主に小学校入学前の子どもたちためのプレ・エレメンタリー・スクールと小学生、高校生のための補習授業、そして様々な理由から就学の機会を逸した子どもたちのためのオルターナティブ・スタディーの教室だ。エドワードのようなボランティアを含めて、12人ほどのスタッフが子どもたちの教育に当たっている。
 この国ではプレ・エレメンタリー・スクールの卒業が小学校入学の条件になっているので、このセンターの存在意義はとても大きい。昼食やおやつ等の提供によって、栄養失調の子どもたちの健康促進にも寄与している。毎日、60人ほどの子どもたちが通ってきていた。
 小学校入学前の子どもたちが勉強している建物の2階では、小学生、高校生のための補習授業が行われていた。この国では教室数の不足から小学校も高校も2部制のところが多く、午前と午後で別の生徒が同じ教室を使って勉強している。そのため昼間もたくさんの子どもが家にいるが、家にいても勉強できる環境が整っていないので補習教室の存在は貴重だ。こちらには、毎日50人ほどの子どもたちが通ってきていた。
 もう一つのプログラム、オルターナティブ・スタディーは、日本で言えば大学入学資格検定のようなシステムだ。小学校や高校を卒業できなかった子どもでも、試験にさえ受かればその資格を認められる。その資格取得を目指して、オルターナティブ・スタディーの教室では10代後半の若者たちが小学校の教科書に懸命に取り組んでいた。TNKは、わたしたちとフィリピンの子どもたちをつなぐ架け橋であると同時に、子どもたちと未来をつなぐ架け橋でもあるようだ。
※写真の解説…TNKのスタッフたちと共に。