《司教団声明『いますぐ原発の廃止を』》


司教団声明『いますぐ原発の廃止を』
 日本カトリック司教団が原発の即時廃止を求める声明を出したことをtwitterで知らせたところ、たちまちのうちにretweetの数字が伸び、2時間あまりで「100+」に達しました。もう、これ以上はカウントできないということです。ヨーロッパの脱原発カトリック教会が果たした役割を知っている人々が、日本のカトリック教会にも大きな期待を寄せていることがうかがえる現象でした。このブログでも、日本のカトリック司教団声明の内容の概略と教皇ベネディクト16世原子力平和利用についての近年の発言をご紹介しておきたいと思います。
1.日本カトリック司教団の発言
(1)ミレニアム・メッセージ『いのちへのまなざし』の反省
 今回の声明では、冒頭で2000年に司教団が発表したミレニアム・メッセージ『いのちへのまなざし』が引用されています。『いのちへのまなざし』の中で司教団は「(原子力の)有効利用については、人間の限界をわきまえた英知と、細心の上に細心の注意を重ねる努力が必要でしょう。しかし、悲劇的な結果を招かないために、安全な代替エネルギーを開発していくよう希望します」と述べ、原発について慎重ではあるものの、廃止を求める立場は取りませんでした。
(2)即時廃止を求める
 この反省に立って今回、司教団は「日本にあるすべての原発をいますぐに廃止する」とはっきり呼びかけました。経済優先ではなく、地震が多発する国土において何よりも尊いいのち、美しい自然を守る」ことを優先すべきだという信念がその背後にあります。放射性廃棄物が後世に残す危険の大きさという、世代間倫理の問題へも言及していいます。自然エネルギーの開発を急ぐべきとの指摘は、後に述べる教皇ベネディクト16世の最近の発言と軌を一にするものです。
 最後に、「大切なことは、電気エネルギーに過度に依存した生活を改め、わたしたちの生活全般の在り方を転換していくことなのです」と述べて、キリスト教における清貧の伝統の立場から現代社会の生活のあり方そのものの見直しを訴えている点に、宗教界からの発言として大きな意味があると考えられます。
★全文は以下をご覧ください⇒ http://www.cbcj.catholic.jp/jpn/doc/cbcj/111108.htm
2.教皇ベネディクト16世の発言
(1)IAEAの創立50周年にあたって
 2007年、核兵器の拡散防止と原子力の平和利用の促進を目的とする国際機関、IAEAの創立50周年にあたって、教皇ベネディクト16世「この組織の目的を全面的に支持するローマ教皇庁は、その創立からのメンバーであり、今後もその活動を支持し続ける」と述べ、地球環境に配慮しつつも、途上国の貧しい人々を救うため原子力の平和利用を促進することの必要性を強調しました。この発言が行われたとき、欧米のメディアは、バチカン原子力発電を積極推進する立場を表明したと受け止めました。
(2)3.11以降の発言
 しかしベネディクト16世は2011年6月9日、原発再開の可否を決定するイタリアの国民投票の1週間前、バチカンにおいて外交使節団に接見した際、福島での原発事故によってもたらされた自然破壊に言及しつつ「自然を守る使命を託された人類が、技術によって支配されたり、使われたりすることがあってはならない」原子力の平和利用に慎重な姿勢を示しました。同時に教皇「わたしたちは環境を大切にする生活様式を取り入れ、クリーンエネルギーを開発することを優先課題としなければならない」と述べ、原発に代わるエネルギー源の開発を示唆しました。この発言は、翌週行われたイタリアの国民投票に大きな影響を与えたと言われています。
※写真の解説…放射能汚染によって無人化した福島県飯舘村