フォト・ライブラリー(274)The Transit of Venus in Kobe, 2012


The Transit of Venus in Kobe, 2012
 本日、神戸で観察した太陽の太陽面通過の写真を合成して1枚の写真にしてみました。巨大な月の影が太陽を覆い隠す前回の金環日食と違って、小さな小さな金星の影が太陽の表面を横切っていくというだけの現象はちょっと地味に見えるかもしれません。ですが、天文学的には100年に1度というくらいの珍しい出来事。1874年に起こった金星の日面通過のときには、わざわざアメリカやメキシコ、フランスから観測隊が日本を訪れ、各地で観測を行いました。神戸も、中央区の諏訪山公園にフランス隊の観測基地が置かれたそうです。諏訪山公園には今でも、「金星台」と呼ばれる高台があり、当時の観測の様子を記した記念碑が置かれています。明治維新を迎えたばかりの神戸の街に、わざわざ金星を見るためにフランスから大きな望遠鏡を運んできた人々を、当時の日本人はどんな思いで見たのでしょう。
 金星の太陽面通過が次回みられるのは、今から105年後の2117年。次の金環日食が83年後ですから、それと比べてもまだまだ先の話です。今回の出来事も、歴史の一コマに刻まれて次の世紀の人々に語り継がれることになるのでしょうか。この写真を見つけた100年後の人たちの顔を想像すると、なんだか楽しくなってきます。
 金環日食のときのベイリービーズほどではありませんが、今回も珍しい現象がありました。金星の形が太陽面に入ったり、出たりするときに歪んで水滴のような形になるブラックドロップ現象です。このために太陽面通過の正確な時間を測定することが困難になり、観測者泣かせの現象だとのことです。
 ちなみに、日本語では金星の太陽面通過、日面通過、日面経過などと呼ばれている今回の現象、英語では "The Transit of Venus"と呼ぶそうです。なんだかとてもロマンチックで魅力的な名前だと思いませんか。わざわざ世界各国から天文学者たちが日本にやってきたのも、ちょっとわかるような気がします。
★今回も記念のハガキを作ってみました。こちらからPDFでダウンロードできますので、どうぞご利用ください。 The Transi of Venus, 2012 ハガキ.PDF 直
★前回の金環日食のときのハガキも、よかったらどうぞ。⇒ 金環日食の流れ(ハガキ).PDF 直