祈りの小箱(3)ヨハネ・パウロ2世『存在の深みで生きる神秘』


ヨハネ・パウロ2世『存在の深みで生きる神秘』

 ヨハネ・パウロ2世が残したこの言葉と初めて出会ったのは、今から17年前にインドのカルカッタでボランティアをしていた頃のことでした。当時のわたしは、自分が本当に司祭への道に呼ばれているのか大いに迷っていました。祈りの仕方もよくわからないまま、将来への不安と被造物への執着によって引き裂かれるような苦しさを味わうことさえありました。
 そんなとき、後にマザーの後継者となったシスター・ニルマラと話す機会がありました。観想修道会に所属し、マザーの右腕として活躍する彼女こそ、召命の迷いについて相談する一番いい相手だと思ったわたしは、そのとき思い切って彼女に「司祭召命を考えているのだけれど、どうやって祈ったらいいのかまったくわかりません」と打ち明けたのでした。
 するとシスター・ニルマラは、ちょっと考えてから、「ここで待っていなさい」と言って事務所の中に入っていきました。10分ほどして出てきた彼女は、わたしに1枚の紙を手渡しました。召命を考えるために役立つ言葉を、わざわざ紙に書き写してきてくれたのです。そこに書かれていた言葉の一部が、ここで引用したヨハネ・パウロ2世の言葉でした。
 一人になってゆっくり読み返す中で「存在の深みで受け入れ、生きる神秘」という言葉がわたしの心に響いてきました。そして、心の一番奥深いところで待っておられるイエスと出会い、その呼びかけに耳を傾けること。その呼びかけにこたえて生きることこそが召命だということが、ぼんやりとわかってきたのです。その後、黙想会に参加したり、家で一人で祈ったりしながらその感覚を深めていったことが、自分の召命の最終的な識別につながったように思います。
 司祭職に限らず、結婚すること、何かの職業に就くことなどすべてが、神の呼びかけへの応答として生きられるとき召命になります。皆さん自身の召命を見つけるために、どうぞこの言葉をお役立てください。
★このカードはこちらからPDFでダウンロードできます。⇒ 存在の深みで生きる神秘.PDF 直