【教皇ベネディクト16世、最後の一般謁見】


教皇ベネディクト16世、最後の一般謁見

 2013年2月27日、サン・ピエトロ広場にて行われた教皇ベネディクト16世の最後の一般謁見でのメッセージを抄訳してみました。教皇様の言葉をしっかりと胸に刻み、祈りのうちに教皇退位の歴史的な瞬間を迎えたいと思います。
※完全な訳は、追ってカトリック中央協議会から発表されるでしょう。しばらくお待ちください。

「私の教皇在位中、最後の一般謁見にこんなに多くの方が集まってくださったことを感謝します。いま朗読された使徒パウロのように、私の心は、教会を導き、育てて下さる神に感謝せずにいられない気持ちで一杯です。神は御言葉の種をまき、神の民の信仰を養ってくださいます。いまこのとき、私の心は全世界に広がり、教会をすっかり包み込んでいます。教皇としての奉仕の年月に受け取った、イエス・キリストへの信仰、教会の体にめぐりわたる愛、そして私たちの心を開いて十全な人生に導き、天の国へといざなう希望についての『知らせ』を神に感謝します。」

「ほぼ8年前の4月19日に教皇職を受けることに同意したときも、福音の力への確信は揺らぐことがありませんでした。そのとき私の心の中に響き渡ったのは『主よ、何をお求めですか。あなたが私に担わせようとしているのは、たいへんな重荷です。ですが、もしあなたがお求めなら、お言葉の通り網を投げましょう。あなたが必ず導いて下さるはずですから』という言葉でした。そして、主は実際に私を導いて下さいました。主は私の近くにおられ、わたしは日々主の存在を感じることができました。過ぎた年月は、教会の巡礼の道の延長であり、喜びと光のときもあれば、困難なときもありました。私は、ガリラヤ湖で他の弟子たちと一緒に舟に乗っているように感じました。主は、晴れて穏やかな風が吹く日、大漁の日もたくさん与えてくださいましたが、波が荒れ、向かい風が吹くときもありました。それは、かつて教会の歴史がそうであったのと同じです。そんなとき、主は寝ておられるようでした。しかし、私はどんなときも主が舟におられると知っていました。教会という舟は、主のものなのです。そして、主が教会を沈ませることはありません。」

「信仰がもっと生活の隅々にまで行き渡るようにと始めた信仰年に、主への揺るがぬ信頼を新たなものにしましょう。子どものように、神の手に身をゆだねましょう。そして、どれほど困難なときでも神が支え、歩ませてくださると信じて安心していましょう。息子を私たちに与え、無限の愛を示してくださった神の愛を、皆さんに感じていただきたいと思います。わたしは皆さんに、キリスト教徒であることの喜びを感じていただきたいのです。ある美しい朝の祈りにこうあります。『わが神、私はあなたを讃えます。心からあなたを愛します。私を創り、キリスト教徒にして下さったことを感謝します。』そう、私たちは信仰の恵みのおかげで幸せです。それは、誰も私たちから奪うことができない恵みです。祈りとキリスト教徒らしい生活によって、このことを毎日神に感謝しましょう。神は私たちを愛してくださいますが、私たちが神を愛することも望んでおられるのです。」

「この数か月、私は力の衰えを感じ、正しい決断を下せるよう主の光で照らしてくださいと熱心に神に祈りました。私自身のためではなく、教会のためです。私はこの行為の深刻さと崇高さを十分に知り、なおかつ深い心の安らぎのうちにこの一歩を踏み出しました。教会を愛するとは、困難な選択をする勇気を持つこと、自分のことではなく、教会のことだけを考えるという意味でもあります。」

「2005年4月19日の話に戻ります。決断する時にもっとも重く感じたのは、その瞬間からいつでも、そして永遠に主に捧げられた者になるという事実でした。教皇職を受ける者には、もはや私生活はありません。教皇はいつでも完全にすべての人のものであり、教会全体のものです。人間は人生を捧げ物として神に差し出すまさにそのとき、本当の人生を受け取るのだと、私は感じてきたし、今この瞬間も感じています。」

「『いつでも』ということは『永遠に』ということです。私的な生活に戻るということはありません。私は十字架を捨てず、新しいやり方で十字架上のイエスに寄り添います。教会統治の権能を用いることはありませんが、祈りの生活によって聖ペトロの内にとどまるのです。教皇として私がその名を身に帯びている聖ベネディクトは、このことの偉大な模範となるでしょう。聖ベネディクトは、活動的にであるにせよ観想的にであるにせよ、神の業に全面的に参与する生活への道を示してくれました。」

「皆さんが、私の重大な決断を、尊敬と理解をもって受け入れて下さったことに感謝します。私は、祈りと黙想によって教会に寄り添い続けます。どうぞ、神の前で私を思い出してください。何より、重大な任務を担う枢機卿たちのために祈ってください。そして、新しい教皇に、聖霊の光と力をもって主が共にいて下さるよう祈ってください。
 神の母であり教会の母であるマリアのとりなしを願いましょう。聖母がわたしたちの一人ひとりに寄り添い、全教会共同体に寄り添ってくださいますように。深い信頼のうちに、私たちは聖母に身をゆだねます。
  友である皆さん。神は教会を導き、支えて下さいます。困難なときは特にそうです。教会と世界が進むべき道を唯一正しく示す、この信仰のビジョンを決して失わないようにしましょう。私たちの心に、皆さん一人ひとりの心に、神が近くにおられる、神は私たちを見捨てない、神は近くにいまし私たちを愛で包み込んで下さるという喜ばしい確信がいつもあるように。ありがとう。」
★英語原文はこちらからご覧になれます。⇒ http://www.news.va/en/news/pope-final-general-audience-full-text