祈りの小箱(32)『自分と向かい合うために』


『自分と向かい合うために』
 何かと向かい合うためには、向かい合うものと自分とのあいだに距離が必要です。ぴったりくっついてしまっていては、向かい合うことなどできるはずがありません。これは当たり前のことですが、「自分と向かい合う」というときに、わたしたちはこの当たり前のことを忘れてしまいがちです。
 例えば、悲しみや、怒り、いらだちなどの感情によって心がかき乱されているとき、わたしたちはそれらの自分の感情に呑み込まれてしまっています。感情の大波に呑み込まれて、その中で翻弄されているのです。自分に呑まれていると言ってもいいかもしれません。そのような状態で自分と向かい合うことは不可能と言っていいでしょう。自分の感情によって、自分とぴったりくっついてしまっているからです。
 あるいは、何かを強く望み、そのことに執着しているときもそうです。わたしたちは気づかないあいだに自分の執着と一つになり、執着によってあちこちに引きずり回されることになります。自分に引きずりまわされていると言ってもいいかもしれません。そのような状態でも、自分と向かい合うことはできません。自分の執着によって、自分とぴったりくっついてしまっているからです。
 そのような状態にあるとき、わたしたちは、自分が自分とぴったりくっついてしまっているということにさえ気づきません。そのまま「自分と向かい合おう」としても、ただ感情や執着によって翻弄され、引きずりまわされるだけです。大切なのは、自分がいま、感情に翻弄され、執着に引きずり回されていると気づくことです。そして、それらの感情や執着とのあいだに少しずつ距離を取っていくことです。十分に距離がとれたとき、わたしたちは初めて「自分と向かい合う」ことができるでしょう。
 心の深みにおられる神と向かいあうためには、まず自分と向かい合わなければなりません。自分自身から距離を取ることが、神と向かい合うための第一歩と言っていいでしょう。
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