マザー・テレサ『すべての人を愛するために』
「なぜ、あなたはすべての人を同じように愛せるのですか」と聞かれたとき、マザー・テレサは「わたしたちは、二人の人を完全に愛することはできません。ですが、人々の中におられる唯一の神を愛するなら、すべての人を愛することができます」と答えました。いくらマザー・テレサでも、2人の人を完全に愛することはできない。でも、すべての人の中に唯一の神を見出すなら、唯一の神への愛ですべての人を愛することができるというのです。
この言葉を聞くと、「なんだ、その人ではなく神を愛しているだけなのか」と思う人もいるかもしれませんが、そんなことはありません。出会う人々の悲しみや苦しみに向かって自分の心を全面的に開き、相手のすべてをありのままに受け入れない限り、その人の中に神を見出すことなどできないからです。相手の命を心から慈しみ、じっと見つめているあいだに、相手の向こう側にイエス・キリストの姿が透けて見える。相手の中に神を見つけるとは、そのような体験です。
相手の命を慈しみ、命の尊さの中に神の輝きを見つけ出すとき、わたしたちは全身全霊で相手を愛することができるでしょう。その愛は、誰に対しても変わることがありません。自分のすべてを捧げる愛で、すべての人を愛することができるようになるのです。ここに、マザー・テレサの愛の秘密があると言っていいと思います。
何人かの子どもたちを育てているお母さんや学校の先生などから、すべての子どもを同じように愛することができないという悩みを聞くことがあります。施設や病院などで働いておられる方からも、同じような悩みを抱えておられるようです。そのような方たちにとって、マザーのこの言葉はきっと一つの道標になるでしょう。
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