祈りの小箱(47)『魂の深みに届く言葉』


『魂の深みに届く言葉』
 もう10年以上前のことになりますが、いつも心に響く説教をして下さる老司祭に、説教の秘訣を尋ねたことがあります。そのときに、その神父様が教えて下さったのが今日のカードに書かれた内容です。古いことで一言一句はっきり記憶しているわけではありませんが、とても心に響いたので、今でもそのときの神父様の話しぶりや内容だけははっきりと覚えています。そのときに聞いたことを、わたしなりに今まとめ直すとこうなると言ってもいいかもしれません。
 ある種の法則とも言っていいこの事実は、好むと好まざるとにかかわらずあらゆる場合に当てはまります。面接をしていて、相手の気持ちにうまくよりそうことができない。そこで、頭で考えて、一般的なアドバイスを与える。そのようなアドバイスが相手の心に響くことは極めてまれです。相手の喜びや苦しみを共に味わい、心の底から語った言葉だけが、相手の心の深みに届き、何らかの変化をもたらす。そのように感じます。説教を準備する場合でもそうです。注解書や参考文献を読み漁って資料を集め、それをうまく組み立てて説教を作った場合、どんなにうまくいっても信徒の方々に知的な興奮を呼び起こすのが関の山で、心からの回心や信仰の喜びを呼び起こすことはできません。やはり、自分自身がこの御言葉によって救われたという喜びや魂の叫びを言葉にしない限り、信徒の魂に救いの喜びを伝えることはできないのです。知的に興奮したとか、こんなことを思いついたとか、あんなことを聞いたということくらいではだめです。相手の魂の深みにまで御言葉の救いを届けたいのなら、まず自分自身が魂の深みでそのみ言葉を受け止め、そのみ言葉によって救われる必要があるのです。
 面接や説教だけではありません。わたしたちの発するすべての言葉がこのような性質を持っているのです。本当に相手の魂に届けたい言葉ならば、まず自分自身が魂の深みで味わってから語る。そのことを心掛けたいと思います。
※写真…夕暮れ時の奥日光、中禅寺湖
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