祈りの小箱(55)福者コルカタのマザー・テレサ『もし自分のことを棚に上げるなら』


福者コルカタマザー・テレサ『もし自分のことを棚に上げるなら』
 「もし自分のことを棚に上げるなら、あなたはぶつぶつ言い始めるでしょう。」とても耳が痛い言葉ですが、確かにその通りだと思います。誰かを痛烈に批判したり、自分の置かれた状況について苦情を並べたりするとき、わたしたちは自分自身のことをすっかり棚に上げてしまっているのです。「自分にはあの人のような欠点がないのだろうか」、「このような状況を招いたことについて、自分に落ち度は全くないのだろうか」、そのように考え始めれば、誰もその人や状況について辛辣な批判を加えることはできなくなるでしょう。「あなたたちの中で罪を犯したことのない者が、まず、この女に石を投げなさい」(ヨハネ8:7)とイエスに言われた人々が、姦通の女に投げようとしていた石を捨てざるを得なかったのは、棚に上げていた自分自身のことを思い出したからに他なりません。
 誰かが自分のことを棚に上げて批判や苦情を口にし始めると、それは周りの人たちにも伝染していきます。これまで自分自身のことを省みながら我慢していた人たちも、「そうそう、そうなのよね」と口を開き始めるのです。傲慢は伝染する、と言い換えてもいいかもしれません。そして、話が終わった後には、「あんなことまで言わなければよかった。わたしは一体何様なのだろう」という何とも言えない後味の悪さだけが残るのです。
 もちろん、状況を変えてゆく必要はあります。しかし、自分のことをすっかり棚に上げて相手や状況の問題点ばかり並べ立てても、状況は決して変わりません。「ぶつぶつ言う」のではなく、面と向かって相手と話し合う。状況を変えるために、自分に出来る限りのことをする。それが大切です。口に出して、あるいは心の中で、「ああ、わたしはまたぶつぶつ言い始めてしまった」と思ったらすぐにマザーのこの言葉を思い出し、「自分自身はどうなのだろうか」と振り返ってみましょう。
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