「ふっこうのかけ橋」2013News(4)福島での交流会

「ふっこうのかけ橋」2013News(4)福島での交流会
 10月24日、「ふっこうのかけ橋」に参加してくれた子どもたち、お母さんたちと、福島市内の修道院で交流のひと時を持ちました。今回は、そのときの様子と福島の現状についてご報告したいと思います。

 まずは楽しい交流会の様子から。カトリック看護協会の全国大会に参加するため仙台に行く途中で福島に立ち寄ったのですが、シスターやお母さん方が立派な交流会の場を設けてくれていました。わざわざ歌入りの式次第まで作って下さるという熱の入り方。神戸の皆さんへの感謝を、代表してわたしが受け取った形です。

 交流会では、子どもたちから神戸での感想が披露されました。生き生きとした話しぶりから、どの子も、夏の思い出を大切に胸にしまっているということがよく分かりました。この夏は体調不良で神戸に来られなかったシスター江川もすっかり元気になり、ギターで歌の伴奏をしてくれました。

 最後にわたしからの話ということになったので、マザー・テレサとの出会いの話をしました。キャンプのときには時間がなかったので、子どもたちにマザーのことを話すのはこれが初めてでした。「神戸の親切な神父さん」としか思っていなかったようで、マザーと会ったことがあると話すと、子どもたちはみんな目を丸くして驚いていました。子どもたちも、マザーが大好きなようでした。

 交流会の前に、桜の聖母の幼稚園と短期大学を見学させてもらい、先生方からお話をうかがいました。桜の聖母幼稚園は地震で半壊し、この7月に新しい園舎が完成したばかりです。

 立派な園舎ができましたが、子どもの数は震災前の150人から73人にまで減少。たくさんの子どもたちが、親せきなどを頼って県外に避難したままだそうです。お父さんだけは福島に残って働き、お母さんと子どもだけが避難しているケースがほとんどだとのことでした。

 新しい園舎の最大の特徴は、この室内遊技場。室外はまだ空間放射線量が高く、植え込みや大きな木の周り、側溝などのいわゆる「ホットスポット」もあちこちにあるため、長時間子どもたちを遊ばせるのには不安が残ります。外で十分に遊ばせられない分を、この室内遊技場で補っているとのことでした。特に強い風が吹いて土ぼこりが立っている日などは外で遊ばせられないため、子どもたちはここで遊ぶそうです。放射性物質にまみれてしまった砂場は、室外ではどこも使用禁止になっているため、室内での砂遊びは子どもたちにとって大きな楽しみの一つです。24時間換気扇を回して空気を入れ替え、子どもたちの健康に気を配っています。

 桜の聖母短期大学の由緒ある修道院は、震災で半壊したため、取り壊されてしまいました。現在は、院内の備品など貴重な品物を集めて展示する部屋が、短大の中に設けられています。第二次世界大戦中は、捕虜収容所としても使用された建物でした。

 カトリック野田町教会にも足を延ばしました。教会に隣接する幼稚園の園庭には、空間線量を表示するモニターが設置されていました。この日の数値は0.196μSv/h。東京都内の空間線量はおおよそ0.03μSv/h前後ですから、それと比べるとまだ6-7倍程度の高い数値。事故の1カ月後に訪れたときは1.5〜2.0μSv/hでしたからそれに比べればだいぶ下がり、除染の効果も出ているようでしたが、まだまだ不安の残る数値と言えるでしょう。福島の地で子育てを続けるお母さんたちは、心のどこかに不安を抱えながら子育てを続けています。
 不安を抱えながら子育てを続けるお母さんたちに、県外からは「子どもの命がどうなってもいいのか。それでも親か。物欲を捨てて、一刻も早く避難しろ」というような非難が、県内からは「いつまで心配してるんだ。お前たちがそんなことだから福島が危険と思われるんだ」という非難が浴びせられているとも聞きました。そのような非難の土台となっているのは、放射能の危険性について、自分たちはすべてを知っているという過信でしょう。県外から非難する人々は福島は危険だと決めつけ、県内から非難する人々は福島を安全だと決めつけて、それぞれのドグマを守るためにお母さんたちを非難しているのです。しかし、実際には、わたしたちの誰一人として、放射能の危険性について確かなことを知らないのです。漠然とした不安を抱えながら暮らしているお母さんたちこそが、一番よく状況を把握していると言ってもいいでしょう。これからも福島の子どもたち、福島で子育てを続けるお母さんたちの声に耳を傾けながら、共に歩みを進めていきたいと思います。