祈りの小箱(107)『よい聞き手』


『よい聞き手』
 その人と話していると、心の奥深いところにあった漠然とした思いが、はっきりとした言葉になって湧き上がってくる。自分でも気づいていなかった本当の自分に出会うことができる。そんな人がときどきいます。よい聞き手というのは、確かに存在するのです。
 では、よい聞き手とはいったいどんな人のことでしょう。わたしがすぐに思い出すのは、キリスト教放送局FEBCのアナウンサー、吉崎恵子さんです。2010年、マザー・テレサの生誕100年を記念する特別番組で、吉崎さんから2時間ほどインタビューを受けたことがあります。そのまま放送されるということだったので、一応の原稿を準備して臨んだのですが、結果として原稿を見ることはほとんどありませんでした。じっと話に聞き入り、ときおり絶妙な問いかけを入れて話を引き出していく吉崎さんに導かれるままに話し続け、気がつくと2時間近くがすぎていたという感じでした。吉崎さんは、ときおりにこやかにほほ笑んだり、目に涙を浮かべたりしながら、最後まで集中して聞き続けて下さいました。あのときの吉崎さんこそ、わたしは「よい聞き手」の理想だろうと思っています。
 よい聞き手となるために必要なのは、心を開き、相手の話を自分の心の深みで受け止めることかもしれません。相手が心の深みでしっかり受け止めていてくれることが分かると、話している方も、心の深みにある思いを話さざるをえなくなるからです。心の深みにある思いが、吸い寄せられ、引き出されてくると言ってもいいかもしれません。以前に、「心の深みから発っせられた言葉は、相手の心の同じ深さまで届く」という言葉を紹介しましたが、逆に、「心の深みで言葉を受け止める人は、相手の心の深みにある言葉を引き出すことができる」のです。
 そのような聞き手と出会える人は幸いです。話しているだけで、これまで気づいていなかった本当の自分に出会うことができるからです。わたしも、そんな聞き手になれるようがんばりたいと思います。
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★このインタビューを収録したMP3ディスク『マザー・テレサ生誕100年記念番組』は、こちらからお求めになれます。『置かれた場所で咲きなさい』の渡辺和子さんへのインタビューも収録されています。⇒ http://lib.febcjp.com/sp204_t/
Youtubeでこのインタビューの一部をお聞きいただけます。