祈りの小箱(127)『他の人にとってはどうでもいいこと』


『他の人にとってはどうでもいいこと』
 自分に誇りを持つのはすばらしいことですが、ときとしてわたしたちは、自分が誇りに思っていることを尺度にして人々を判断してしまいがちです。歌が上手な人は、美しい歌声を響かせることができる人こそ価値がある人間だと主張し、足が速い人は、足の速さこそ人間にとって一番大切なことだと主張し、料理がうまい人は、料理のうまさにその人の人間としての価値があると主張する。そんなことになってしまいがちなのです。ある人は語学力、ある人は学歴、ある人は背の高さ、ある人は容姿といった具合に、自分が誇りに思っていることを人間の価値の尺度にし、その物差しで他の人たちも測ろうとするのです。
 ところが、実際にはそんなことはありません。例えば、歌がうまいということは本当にすばらしいことですが、ほとんどの人にとってそのことは人間の価値とは無関係なのです。ある人が「自分は歌がうまい、優れた人間だ。あなたたちは私に劣る」とどんなに力説したとしても、それを聞いた人たちは「ああ、そうですか」と思うだけ。その人を価値のある人間として尊敬する人はあまりいないでしょう。その人にとっては人間の価値に関わると思われるほど大切なことも、ほとんどの場合、他の人にとってはどうでもいいことなのです。
 本当に優れている人とは、そのことに気づいている人でしょう。一人一人にそれぞれのよさがあることに気づき、自分の存在価値に確信を抱くと同時に、自分と違う相手の存在価値にも同じくらい確信を持っている人、自分の尺度で相手を裁かない人こそ、誰からも愛され、誰ともうまくやっていくことができる人だからです。自分にとって大切なことも、他の人にとってはどうでもいいことかもしれない。そう思える心を、失わないようにしたいと思います。
★このカードは、こちらからダウンロードできます。⇒
JPEG 『他の人にとってはどうでもいいこと』.JPG 直
PDF 『他の人にとってはどうでもいいこと』.PDF 直