祈りの小箱(188)『苦しみの意味』


『苦しみの意味』
 「神様がいるのに、なぜ人間はこんなに苦しまなければならないのですか」という質問をよく受けます。とても実感のこもった質問です。神様がいるなら、なぜ神様は人間に苦しみを与えるのでしょう。一つの答えは、苦しみを味わった人にしか果たすことができない、大切な使命があるということです。
 例えば、こんなことがありました。東日本大震災仮設住宅で、「お茶っこ」と呼ばれる交流会に参加したときのことです。参加者の中に、たまたま神戸から来た、阪神淡路大震災の経験者がいました。ご自分も、仮設住宅で何年も生活し、先の見えない苦しみを味わったという方です。その方がいま現在、仮設住宅で暮らすお年寄りの話を聞き、しみじみと「だいじょうぶや。いまはつらいかもしれんけど、必ず笑い話になる日がくる」と言ったとき、将来への不安を抱えて苦しんでいたお年寄りたちは涙を流して喜びました。目の前に同じ苦しみを乗り越えて来た人がいる。その人が「だいじょうぶ」と言っているんだから、きっと「だいじょうぶ」に違いない。そう思って安心したのでしょう。同じ苦しみを味わった人だからこそ言えた一言です。
 そもそも、イエス・キリストの十字架上での苦しみも、そういうことだったのでしょう。イエスが十字架上で苦しまなければならなかったのは、十字架上で苦しむことによってしか人類を救うことができなかったからです。十字架上での孤独な死、神から見捨てられたとさえ思うほどの苦しみを味わうことで、イエスは人間がこの地上で味わうすべての苦しみを味わいつくしました。すべての苦しみを味わい、乗り越えたイエスの口から出る慰めの言葉は、聞いているわたしたちの心に深く沁みこみ、大きな力を与えてくれます。苦しみを味わった人にしか果たすことができない使命が、必ずある。そのことを忘れないようにしたいと思います。
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