祈りの小箱(207)『共感する力』


『共感する力』
 「苦しみにはどんな意味があるのか」という問いへの一つの答えは、苦しみを味わうことによって、それと同じような苦しみを味わっている人々の気持ちが想像できるようになるということだと思います。たとえば、健康なときには想像できなかった病気の人の苦しみが、自分自身が病気になることによって分かる。肉親を失った人の悲しみが、自分自身が肉親を失うことによって分かる。そのようなことが起こるのです。歳をとって様々な苦しみを味わうにつれて、ちょっとしたテレビや映画の感動的な場面でも涙が出てしまうのは、苦しみを味わうことによって苦しみを想像する力がついたからだと言っていいでしょう。苦しみの体験はわたしたちに、苦しみに「共感する力」を与えてくれるのです。
 病気の苦しみを味わったことがある人は、病気の人の苦しみを思って相手のために涙を流すことができます。肉親との死別の苦しみを味わったことがある人は、肉親を失った人の傍らに立って涙を流すことができます。そうすることで、相手の苦しみを一緒に担うことができるようになるのです。自分の苦しみを我がことのように共に担ってくれる人の存在ほど、苦しみの中にいる人を励ますものはありません。共感してくれる人の存在は、苦しみの中にあってある種の「救い」になりうるのです。その意味で、苦しみはわたしたちに、誰かを救うための力を与えてくれると言っていいでしょう。
 神がわたしたちに苦しみを与えるのは、同じ苦しみの中にある人たちに共感できるようになるため。その人たちの苦しみを共に担う力を与えるためなのです。苦しみを与えられるとは、使命を与えられることだと言ってもいいかもしれません。
★このカードは、こちらからダウンロードできます。⇒
JPEG 214『共感する力』.JPG 直
PDF 214『共感する力』.PDF 直