祈りの小箱(213)『真の平和』


『真の平和』
 大きなテロ事件が起こるたびに、テロリストとの戦いが声高に叫ばれ、テロリストを殲滅するための作戦が発動されます。ですが、テロ事件は減るどころか、ますます増えてゆくようにさえ見えます。いくらテロリストを倒しても、次から次に新しいテロリストが生まれてくるようなのです。なぜでしょう。
 テロリズムの背景には、貧困と格差があると言われています。貧しさや差別の中で将来に希望を見出せず、自暴自棄になった人々が、最後の手段として自分たちを抑圧する社会構造そのものを破壊するテロリズムを選ぶというのです。社会の最底辺で人間としての尊厳を踏みにじられ、貧しさゆえに家庭も崩壊し、寄る辺を失った若者たちが次々とテロリストのグルーブに参加する。それがテロリズムの発生のメカニズムだとすれば、どれだけテロリストを殺したところで、戦いはいつまでも終わることはないでしょう。テロリズムをなくすためには、貧困と格差のない社会を実現する以外にないのです。
 これは、テロリズムに限りません。日本社会にときおり見られる無差別殺人も、「誰もわたしを愛してくれない。わたしなんかどうだなったって構わない」という自暴自棄な心理状況での犯行が多いようです。貧困と格差の中で虐げられ、希望を失って自暴自棄になる人たちがいる限り、その絶望が社会に対する暴力となって爆発する可能性はいつでもあるのです。テロリズムや犯罪の根本的な原因が愛の欠如だとすれば、テロリズムや犯罪に打ち勝つために必要なのは、武器や暴力ではなく愛です。真の平和を実現するため、すべての人が愛の温もりに包まれ、誇りを持って生きられる社会を実現することができますように。
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