バイブル・エッセイ(1062)心に納めて思い巡らす

心に納めて思い巡らす

 そのとき、羊飼いたちは急いで行って、マリアとヨセフ、また飼い葉桶に寝かせてある乳飲み子を探し当てた。その光景を見て、彼らは、この幼子について天使が話してくれたことを人々に知らせた。聞いた者は皆、羊飼いたちの話を不思議に思った。しかし、マリアはこれらの出来事をすべて心に納めて、思い巡らしていた。羊飼いたちは、見聞きしたことがすべて天使の話したとおりだったので、神をあがめ、賛美しながら帰って行った。八日たって割礼の日を迎えたとき、幼子はイエスと名付けられた。これは、胎内に宿る前に天使から示された名である。(ルカ2:16-21)

 「マリアはこれらの出来事をすべて心に納めて、思い巡らしていた」とルカ福音書は記しています。他の人たちは「不思議なことがあるものだ」くらいに思って、あまり気にも留めなかった。しかし、マリアは起こった出来事を「すべて心に納めて、思い巡らしていた」というのです。マリアは、神さまがすべての出来事を通してわたしたちに語りかけるということをよく知っていた。だからこそ、すべての出来事を心に納め、神さまが語りかけることを一言もらさず聞こうとしたということでしょう。

 神さまは、すべての出来事を通してわたしたちに語りかける方です。しかし、わたしたちは、マリアのようにそれらの出来事を心に納め、思い巡らしているでしょうか。残念ながらわたしたちは、忙しい毎日の中で、一つひとつの出来事をあまり気に留めず、すぐに忘れてしまうことが多いように思います。「あれもやってこれもやって」とあわただしく過ごす中で、立ち止まって振り返る時間がとれないのです。

 今日は元旦、1年の始まりですが、わたしたちは年末に、過ぎた1年間を静かに振り返る時間を持てたでしょうか。一つひとつの出来事を思い巡らし、その出来事を通して神さまが自分に何を語りかけておられたのか、神さまに尋ねてみたでしょうか。もし忙しくてそんな時間が取れなかったのなら、わたしたちは、せっかくの神さまからの呼びかけを無視して先に進むことになります。せっかく神さまが、わたしたちをこれまでよりずっといい道に導こうとしておられるのに、それを無視して、これまでと同じ道を歩み、同じ間違いを繰り返すことになってしまうのです。

 もし年末に忙しくて1年を振り返る時間がとれなかったのなら、年の初めのいま、その時間をとったらよいでしょう。神さまは、今年、わたしをどこに導こうとしておられるのか。今年、わたしは何を心がけ、何を始めればいいのか。去年の出来事を振り返りながら、神さまに尋ねることができれば、今年はきっと、去年よりもっといい年になるに違いありません。

 一番いいのは、毎日、その日その日に神さまが語ってくださったことを振り返り、祈りの中で思い巡らすことでしょう。1年分まとめて振り返るのもいいですが、毎日、振り返りの時間をとることができれば、神さまの呼びかけをもっと細かく聞き取ることができるはずです。1日の終わりに、たとえ5分でもいいからその日にあった出来事を思い起こし、その出来事を通して語りかけておられる神さまの声に耳を傾ける。それを今年の目標にしたらいいかもしれません。

 大切なのは、人間の思いだけで判断しないということです。「困ったなあ」とか「なんでこうなるんだ」とか、それだけで終わらせず、神さまがその出来事を通して語りかけておられることに耳を傾ける。その姿勢がとても大切だと思います。聖母マリアととともに、起こった出来事を「すべて心に納め、思い巡らす」ことができるように、神さまの導きに従って、よりよい人生の道を選ぶことができるように、心を合わせてお祈りしましょう。

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