バイブル・エッセイ(1247)光の中を歩む

光の中を歩む

 そのとき、イエスは通りすがりに、生まれつき目の見えない人を見かけられた。イエスは地面に唾をし、唾で土をこねてその人の目にお塗りになった。そして、「シロアム――『遣わされた者』という意味――の池に行って洗いなさい」と言われた。そこで、彼は行って洗い、目が見えるようになって、帰って来た。近所の人々や、彼が物乞いであったのを前に見ていた人々が、「これは、座って物乞いをしていた人ではないか」と言った。「その人だ」と言う者もいれば、「いや違う。似ているだけだ」と言う者もいた。本人は、「わたしがそうなのです」と言った。人々は、前に盲人であった人をファリサイ派の人々のところへ連れて行った。イエスが土をこねてその目を開けられたのは、安息日のことであった。そこで、ファリサイ派の人々も、どうして見えるようになったのかと尋ねた。彼は言った。「あの方が、わたしの目にこねた土を塗りました。そして、わたしが洗うと、見えるようになったのです。」ファリサイ派の人々の中には、「その人は、安息日を守らないから、神のもとから来た者ではない」と言う者もいれば、「どうして罪のある人間が、こんなしるしを行うことができるだろうか」と言う者もいた。こうして、彼らの間で意見が分かれた。そこで、人々は盲人であった人に再び言った。「目を開けてくれたということだが、いったい、お前はあの人をどう思うのか。」彼は「あの方は預言者です」と言った。彼らは、「お前は全く罪の中に生まれたのに、我々に教えようというのか」と言い返し、彼を外に追い出した。イエスは彼が外に追い出されたことをお聞きになった。そして彼に出会うと、「あなたは人の子を信じるか」と言われた。彼は答えて言った。「主よ、その方はどんな人ですか。その方を信じたいのですが。」イエスは言われた。「あなたは、もうその人を見ている。あなたと話しているのが、その人だ。」彼は、「主よ、信じます」と言って、ひざまずいた。(ヨハネ9:1.6-9.13-17.34-38)

 イエスが盲人の目を開く場面が読まれました。このような奇跡は聖書にたびたび登場しますが、この箇所で印象的なのは、イエスが目を開かれた人の前に再び現れ、「あなたは、もうその人を見ている。あなたと話しているのが、その人だ」と告げる場面です。わたしたちが救われるためには、見えるようになるだけでは足りない。イエスと出会って心の目を開かれ、イエスを信じることによってこそ救われる。この話は、わたしたちにそのこと教えているように思います。
 イエスによって目を開かれた盲人は、見えるようになったのに、イエスが誰なのか分かっていませんでした。自分が救い主と出会ったことに、まだ気づいていなかったのです。自分が神によって救われたこと、神が自分を愛していることに、まだ気づいていなかったと言ってもよいでしょう。それではまだ救われたことになりません。自分が救い主と出会ったと信じるとき、「神はわたしを愛している、わたしを決して見捨てない」と確信したとき、わたしたちは初めて、この世界の本当の姿が見えるようになるのです。神の救い、神の愛を確信するときにこそ、神の愛の光の中で、わたしたちはこの世界の真実の姿を見ることができるのです。
 見えているのに見えていない、そのようなことはわたしたちにも経験があるでしょう。神さまの愛の光から遠ざかり、不安や恐れ、疑いなどに心が覆われているとき、わたしたちはこの世界の真実の姿が見えなくなるのです。神さまの愛の光から遠ざかるとき、わたしたちは、「ああなったらどうしよう、こうなったら困る」「あの人はわたしを裏切るのではないだろうか、実は敵なのかもしれない」などと考え、とても歪んだ形で世界を見るようになる。そう言ってもよいでしょう。
 本当は美しく、愛に満ちているはずの世界が、醜く歪み、憎しみや悪意に満たされた世界に見えるようになったとき、わたしたちの目は閉ざされています。心がそのような状態になったときには、すぐにイエスを思い出しましょう。「わたしはイエスと出会った。わたしは神さまから愛されている」、そのことを思い出しましょう。そのとき、わたしたちの目は開かれます。この世界は神さまの愛に満たされており、何も心配する必要などないこと。どんな人の心の中にも神さまの愛が宿っており、何も恐れる必要などないことが分かるのです。救い主と出会った喜びの中でこの世界を見るときにこそ、わたしたちの目に、この世界の本当の姿が見えるのです。
 エフェソの信徒への手紙の中でパウロは「あなたがたは、以前には暗闇でしたが、今は主に結ばれて、光となっています。光の子として歩みなさい」と言っています。神さまの愛の光に照らされ、神さまの愛の光の中を歩むとき、どんなときにも希望を捨てず、神さまの愛を信じて生きるとき、わたしたちは「光の子」となるのです。心の目を開かれて救われた者、「光の子」として毎日を生きられるよう祈りましょう。

youtu.be

※バイブル・エッセイが本になりました。『あなたはわたしの愛する子~心にひびく聖書の言葉』(教文館刊)、全国のキリスト教書店で発売中。どうぞお役立てください。