
声を上げる勇気
「人々を恐れてはならない。覆われているもので現されないものはなく、隠されているもので知られずに済むものはないからである。わたしが暗闇であなたがたに言うことを、明るみで言いなさい。耳打ちされたことを、屋根の上で言い広めなさい。体は殺しても、魂を殺すことのできない者どもを恐れるな。むしろ、魂も体も地獄で滅ぼすことのできる方を恐れなさい。二羽の雀が一アサリオンで売られているではないか。だが、その一羽さえ、あなたがたの父のお許しがなければ、地に落ちることはない。あなたがたの髪の毛までも一本残らず数えられている。だから、恐れるな。あなたがたは、たくさんの雀よりもはるかにまさっている。」「だから、だれでも人々の前で自分をわたしの仲間であると言い表す者は、わたしも天の父の前で、その人をわたしの仲間であると言い表す。しかし、人々の前でわたしを知らないと言う者は、わたしも天の父の前で、その人を知らないと言う。」(マタイ10:26-33)
「人々を恐れてはならない。わたしが暗闇であなたがたに言うことを、明るみで言いなさい」というイエスの言葉が読まれました。聖書を開いて日々祈る中で、神さまがわたしたちに教えてくださる神のみ旨、神の真理を、恐れずに人々に言い表しなさい。それが伝えるべきことならば、「こんなことを言ったら、周りの人たちからどう思われるだろう。何か嫌がらせをされたらどうしよう」などと考えて、ためらってはいけないというのです。
この言葉を、いままさに実践しているのが教皇レオ14世です。イランでの戦争が長引く中で行われた「平和のためのロザリオの祈り」で、教皇様は、「個人や金銭の崇拝は、もういりません。力の誇示は、もうたくさんです。戦争は、もううんざりです。真の力は、奉仕する人生にこそあるのです」と発言しました。国の指導者たちが自分の能力の高さや自国の力を誇り、力によって相手を屈服させようとしている中で、そのようなものは、本当の力ではない。「本当の力は、奉仕する人生にこそある」と宣言したのです。
「本当の力」とは、世界に平和をもたらす力。貧しい人々を排除することなく、すべての人が幸せに生きられる世界を実現するための力だと言ってよいでしょう。自分の力を誇り、力によって相手を従わせる。そのようなやり方で、真の平和を実現することはできない。聖母マリアのような謙虚な心で、人々に奉仕する指導者であってこそ、真の平和を実現することができる。その真理を、レオ14世は恐れることなく語ったのです。
レオ14世は、最も新しい回勅『マニフィカ・フマニタス』の中で、人工知能AIについても警鐘を鳴らしました。人工知能の判断には、貧しい人々や社会の片隅に追いやられた人を守るといった「道徳」が欠けている場合があること。人工知能を操る人たちが、自分たちだけに都合のよい世界を造る可能性があることなどを指摘した上で、「人工知能の時代にあって、人間性が、これまでにない形で脅かされています。人間性を大切に守ることこそが、わたしたちの義務です」と語ったのです。
技術は人間のためにあるのであって、技術によって人間が脅かされるようなことがあってはならないというのは、教会が原子力やインターネットなど、あらゆる技術について繰り返し述べてきたことです。教皇は、人工知能についてもそのことが当てはまるということをいち早く指摘し、世界に警鐘を鳴らしたのです。それが真理である限り、恐れずに世界に向かって宣言する。レオ14世は、そのようなキリストの弟子の姿を、わたしたちに明確に示したと言っていいでしょう。
結果として、教皇様の発言は、世界中の多くの人々から称賛を浴びました。誰かが本当のことを言ってくれるのを、多くの人々が待ち望んでいたのです。わたしたちは、ともすると、世間の人々に遠慮して、真理を語ることさえためらってしまいがちです。しかし、多くの人々は、わたしたちがキリストの真理に基づいて声を待っているのです。教皇様にならって、真理を高らかに告げる勇気を持てるよう、心を合わせてお祈りしましょう。
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